大藝海〜藝術を編む〜

言葉を編む「大言海」(大槻文彦)、音楽を編む「大音海」(湯浅学)に肖って藝術を編む「大藝海」と名付けました。伝統に根差しながらも時代を「革新」する新しい芸術作品とこれを創作・実演する無名でも若く有能な芸術家をジャンルレスにキャッチアップしていきます。

府中市美術館開館10周年記念展

【演題】府中市美術館開館10周年記念展
    バルビゾンから贈りもの〜至高なる風景の輝き
【展示】コロー 夜明け
    クールペ 雪の中を賭ける鹿
    ルソー 森の大樹
    デュプレ 山村風景
    フォンネージ 沼の落日
    シェニョー 砂けむりの中を行く羊の群れ
    ガシ ハルビゾンの平野に沈む夕日
    ルソー 夕暮れのハルビンゾン村
    本田錦吉郎 豊穣への道
          景色
    小山正太郎 秋景図
    ミレー 羊毛を紡ぐ少女
    笠木治郎吉 帰猟
    浅井忠 収穫
        武蔵野
    ピサロ ロンドン・ハイドパーク  ほか計117点
【会場】府中市美術館
【料金】800円
【感想】
今日は府中市美術館でフランス・ハルビゾン派の絵画を集めた展覧会が開催されているので観に行くことにしました。パリ近郊のフォンテーヌブローの森の中にあるバルビゾン村を拠点に活動したミレー、コロー、ルソー、トロワイヨン、ディアズ、デュプレ、ドービニーなどの画家のことをバルビゾン派と言いますが、(それまで風景画は宗教画の背景としてしか描かれてきませんでしたが)バルビゾンの森の美しい風景などを写しとる自然主義の絵画が誕生しました。個人的にはハルビゾン派の絵画の魅力は自然の色をそのまま写しとったような精妙な色彩感にあると思いますが、例えば、ガシの「ハルビゾンの平野に沈む夕日」(写真1枚目)に見られる夕焼けの美しさは息を呑むほどでキャンバスの中に永遠に封じ込められた自然の瞬間美へと惹き込まれます。画像の解像度が低くこの絵画の鮮やかな色彩を十分にお伝えできないのが残念ですが、一体、この色合いをどのようにしてキャンバスの中で創り出して行くのかその至芸に舌を巻くばかりです。シャルル=エミールの「森はずれの羊飼いの少女」は植物の静と動物の動、森の闇と光が上手く調和された自然の懐の深さを感じさせてくれる一枚ですし、ウジェーヌの「魚釣り」に描かれている夕日の儚さは目を奪われるばかりです。今回の展覧会ではハルビゾン派の影響を受けた日本人画家の作品も展示されていますが、とりわけ松本民治さんの「東都今戸橋乃夜景」は画面一杯に澄み渡る月光がとても美しく印象的でしたし、中川八郎さんの「雪林帰牧」は深々と降り積もる雪の冷たさや深い静寂など雪国の独特の風情が伝わってくる絵に圧倒されました。その他にも、ジャン=フェルディナンの「シコレ爺さん」、山脇信徳さんの「雨の夕」など言葉では汲み尽くせない魅力溢れる絵画が数多く展示されています。もう直ぐ、草木が色付き始める頃なので府中の森公園を散策がてら立ち寄られてみてはいかがでしょうか。

http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/

◆耳も甘党の方へ
風景画を見ていると様々な情感が去来しますが、昔、どこかで見た風景と重なって心の奥底に眠っている記憶を呼び起こすのかもしれません。今日はそんな曲をご紹介しましょう。少し趣向を代えてクラシックではなくイージーリスニングですが、アンドレ・ギャニオンの「セピア色の写真」は個人的に想い出が多く、この曲を聴く度に青春の甘い想い出が走馬灯のように頭を過ります(苦笑)TVドラマでもよく使われている曲なのでご存知の方も多いと思いますが、ハルビゾン派の絵画が持つノスタルジックな雰囲気と親和的な曲想なのでアップしておきます。

http://www.youtube.com/watch?v=HuKuZZ2BtKA