ぶらあび

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オペラへの道〜3人の鬼才が挑んだ80日間

【題名】オペラへの道〜3人の鬼才が挑んだ80日間
【放送】BS−TBS(平成23年12月4日(日)/23:00〜23:54)
【演出】奥田瑛二
【演目】プーランク モノオペラ「人間の声」(台本:コクトー
    三枝成彰 モノオペラ「悲嘆」(台本:アーノルド・ウェスカー
【出演】<歌手>中丸三千繪(Sop)
    <指揮>Yuki MORIMOTO
    <楽団>シアターオーケストラトーキョー
【公演】平成23年9月5日(月)サントリーホール大ホール
【感想】
去る9月5日にソプラノ歌手の中丸三千繪さんが一夜でモノオペラ2作品を公演するまでのドキュメンタリー番組がBS−TBSで放映されていたので観ることにしました。1人の歌手が一夜でモノオペラ2作品(2時間半)を歌うこと自体が相当な負担だと思いますが、今回は俳優の奥田瑛二さんが演出されるということで、(細部の演技まで映されるTV俳優ならではの)肌理濃やかでリアリティーのある演技表現が求められ、一層と、この舞台を難しいものにしていたのではないかと思います。

先ず、プーランクのモノオペラ「人間の声」ですが、奥田さんによるリアリティーのある演出が奏功し、歌と演技、ストーリーが有機的に絡み合いながら、愛から絶望へと変わって行く主人公の心理描写が劇的に表現されていたと思います(残念ながら一部のシーンしか紹介されないツマミ食い放送だったので、いつかこの公演の完全版を見てみたいです)。

次に、三枝成彰さんのモノオペラ「悲嘆」ですが(こちらも一部のシーンしか紹介されないツマミ食い放送)、この作品は三枝さんが中丸さんのために書き下ろした新作で、2・26事件を題材にしてこの事件で亡くなった青年将校の妻が主人公となるモノオペラです。奥田さんは目線の演技で誇り高き日本人女性を表現するように求めていたのが印象的でした。映画俳優は「目で演技する」とよく言いますが、舞台芸術であるオペラではそこまで細かい演技が求められることは少なく、逆に、大袈裟過ぎるくらいの大きな所作(リアリティーよりも分かり易い演出)と歌唱で観客にダイレクトにアピールすることが求められるのが一般的だと思いますので、中丸さんにとってはかなりの戸惑いがあったのではないかと思います。ホールの客席からどのように観えていたのか分かりませんが、テレビで観る限り目線の演技が効果的で、(昭和初期までは居たであろう)高潔な日本人の姿が印象的に表現されていました。また、この曲には6分間の間奏がありますが、奥田さんはその間も演技と音楽だけで魅せる舞台を求めており、女優ではない中丸さんにとっては大きなチャレンジであったのではないかと思います。中丸さんがインタビューで胸筋を開いて上を向いて歌うオペラ(空を飛び、高い木の茂みに潜む獲物を狙うなどの狩猟民族的な所作)と違って、腰を落して背を丸めて控え目に振る舞う和の所作(田を耕し、苗を植えるなどの農耕民族的な所作)ではどうしても歌い難いという悩みを吐露されていましたが、確かにやや声が篭りがちの印象を受けるところはありました。一般的に言って、オペラでは歌が優先されて演出が犠牲にされる傾向があると思いますが、奥田さんの演出では歌を犠牲にしてどこまでリアリティーのある演出を追及するのかという悩ましい葛藤、課題があるように感じられます。なお、先日、上記公演の完全版が放送されたそうですが見逃してしまいました…是非、再演、再放送を期待したいです。

http://www.bs-tbs.co.jp/app/program_details/index/KDT1103300