【題名】クラシックミステリー 名曲探偵アマデウス「ショパン “ポロネーズ・英雄”」
【放送】NHK−BSプレミアム
平成24年1月12日(木)00時00分〜00時45分
【司会】筧利夫
黒川芽以
猪野学
【出演】仲道郁代(ピアニスト)
ミハウ・ソブコヴィアク(ピアニスト)
室田尚子(音楽評論家)
平野啓一郎(音楽評論家)
【感想】
今日も撮り溜めている名曲探偵アマデウスを観ることにしました。あと2、3回ほど撮り溜めたものがありますので、近日中にすべて吐き出すつもりです。今日はショパンのポロネーズ第6番変イ長調(作品53)が採り上げられました。俗に“英雄ポロネーズ”として人気の高い曲ですが、華麗で優美かつ風格を漂わせた主題とこれと一転して中間部での左手の力強いオクターブの連打が印象的で、フランスで過ごしたショパンの祖国ポーランドに対する深い愛情が込められた誇り高く気品に満ちた名曲です。
【楽譜】
http://imslp.org/wiki/Special:ImagefromIndex/80569(印刷譜)
http://imslp.org/wiki/Special:ImagefromIndex/110480(自筆譜)
最初の16小節の序奏では変イ長調の主和音(♭ラ−ド−♭ミ)が使われず、属和音(♭ミ−ソ−♭シ)のみが使われていますが、これは解決すること(主和音→属和音→主和音と進んで音楽的に安定すること)を避けて、解決への期待(主和音へ進むことへの期待)を焦らしに焦らし、序奏から主題へ移行する直前で解決することで主題の華やかな登場感を引き立てる音楽的な効果を上げています。
ポロネーズとは“ポーランド風”という意味ですが、マズルカと同様にポーランドの民族舞踊のことを示します。
ポロネーズの3拍子のリズム
♪ ♬ ♪ ♪ ♪ ♪
〇○○〇 〇〇〇
しかし、英雄ポロネーズで典型的なポロネーズのリズムが出てくるのは7小節間(楽譜42ページの5段目“sostenuto”から7小節)だけですが、この曲の全体を通してポロネーズのリズムは息衝いており亡命音楽家ショパンの祖国に対する強い思いが感じられます。例えば、47小節、89小節、179小節ではメロディー(右手)にポロネーズのリズムを乗せることで全編に亘ってポロネーズのリズムを潜ませ、ポーランドの民族舞踊を芸術的な域に高めています。ピアニストの仲道さんがいつものおっとりとした口調で、ポーランド人からポロネーズのリズムを弾くときは「最初の音を長めにとる」のがコツだと教えられたと仰っていますが、ポーランド人が聴くと民族の血(DNA)の息吹のようなものを感じさせる曲なのかもしれません。実際、ポーランド人ピアニストのミハウ・ソブコヴィアクさんは曲全体に亘ってポロネーズのリズムを感じて演奏しており、例えば、それは具体的なリズムになって現れていない主題の中にもポロネーズのリズムを感じると語っていたことからも伺い知ることができます。
中間部での左手の力強いオクターブの連打(左回り→右回り→両手のアルペッジョ→左回り→右回り)が102回も繰り返されますが(譜面44ページの1段目“pp”〜)、この反復が内から湧き上がるエネルギーを体現しています。この背景には1831年にロシア軍によってワルシャワが陥落し、虐げられた祖国への想いや未来を信じる仲間への励ましが込められていると言えるかもしれません。実際にショパンは次のような言葉を残しています。
“母を救い、父を手助けする人もいない
それなのに僕は何もせず
ただ、ときおりうめき声を上げ
ピアノで悲しみを訴え、絶望するだけだ”
全ての“ド”の音(強拍ではない不自然なところ)にアクセントが付されていますが(譜面45ページ〜、9小節の間に17個)、これはヘ短調であること(“ド”はへ短調の属音であり、主音の“ファ”と共にヘ短調に重要な音)を強く意識させてへ短調の主和音(ファ−♭ラ−ド)へ解決する、即ち、悲しい曲想で終わると予感させています。しかし、その期待を見事に裏切り、ヘ短調から主調変イ長調への転調してドラマチックに曲想が展開され、悲しい敗北を予感させる“ド”が一転して希望の“ド”へと変換して開放感と喜びを湛えて華々しく音楽が締め括られます。祖国ポーランドの復活への想いが込められた“ド”と言えるかもしれません。
【You Tube】
http://www.youtube.com/watch?v=VY6cUlPhb9M&feature=fvwrel
主和音を出さず(00:00〜)
期待感を感じさせる序奏
満を持して(03:31〜)
登場する華やかな主題
典型的なポロネーズのリズムが登場する(02:01〜)
左手オクターブの連打が始まる(03:00〜)
徐々に盛り上がりをみせる(03:21〜)
和音のアルペッジョが挿入され(03:31〜)
また左手の連打に戻る(03:36〜)
不自然に強調されるドの音が不安な気持ちを生む(04:08〜)
ヘ短調に解決せず、変イ長調に向かう
最後にもう一度、華やかな主題が登場(05:33〜)
なお、去る24日にSoft Bankから“ULTRA WiFi 4G”(下り最大76Mpbs)のサービスが提供開始されました。僕は、Soft Bankの“ULTRA WiFi”(下り最大42Mbps)を利用して外出先で“iPhone”や“iPad”を使い、FM放送のエアチェックや録画映像の再生等を行っていますが、これで有線のネットと同じくらい快適な環境でいつでもどこへでも「芸術」を持ち運ぶことが可能になりました。歴史上、メディアの発達(記譜→印刷→アナログ録音→デジタル録音→有線ネット→無線ネット)が芸術受容のあり方を変化させてきましたが、その逆に、芸術受容のあり方の変化が表現(芸術)の多様性を生んできた側面があると思います。今後、この新しいメディアに適応した斬新な表現(芸術)が生まれてくることを期待したいです。ご参考までに各サービスの比較を挙げておきます。
◆モバイルデータ通信サービス比較表
サービス | キャリア | 速度 | 料金 | 総合評価 |
---|---|---|---|---|
ULTRA WiFi 4G | Soft Bank | 76Mbps | 3,880円 | ◎ |
EMOBILE 4G | e-Access | 42Mbps ※来月75Mbps | 3,880円 | 〇 |
Xi | NTT docomo | 75Mbps | 4,410円 ※期間限定料金 | △ |
WiFi WALKER | au | 40Mbps | 4,410円 ※期間限定料金 | × |