ぶらあび

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カストラート

【題名】カストラート
【監督】ジェラール・コルビオ
【脚本】アンドリー・コルビオ
    ジェラール・コルビオ
【出演】<ファリネッリ>ステファノ・ディオニジ
    <兄>エンリコ・ロ・ヴェルソ
    <ヘンデル>ジェローン・クラッペ   ほか
【音楽】<指揮>クリストフ・ルセ
    <演奏>古楽アンサンブル「レ・ラタン・リリック」
    <ソプラノ>エヴァ・マラス=ゴドレフスカ
    <カウンターテナーデレク・リー・レイギン
【発売】コロムビアミュージックエンタテインメント
【料金】2940円
【感想】
入院中の病床から。手術が上手く行き、術後の経過も良好なので、今日はブログを更新します。かなり昔に映画館で実写を観て、その後も何度かDVDで観ている映画ですが、久しぶりに再視聴したので、その感想を簡単に残しておきたいと思います。この映画はバロック時代の名カストラートとして知られるファリネッリの生涯を描いた伝記映画です。ファリネッリについて詳細な記録が残っている訳ではなく、一体、どこまでが史実でどこからが脚色なのか判然としないところはありますが、この種の映画を観るときにそんな野暮なことを考えてはいけません。

カストラート [DVD]

ヘンデルと言えば、日本ではバカの一つ覚えのように“メサイア”しか聴かれない状況が久しく続きましたが(年末に第九しか聴かれないのと同じマインド)、ヘンデルの真骨頂は紛れもなくオペラにあると思います。この数年で漸くヘンデルのオペラが上演される機会が増え、日本で入手できる音盤も増えてきましたが、それでもその作品の魅力と完成度に比して、その認知度は著しく低いのが現状だと思います。バッハはライプツィッヒの聖トマス教会の音楽監督として数多くの宗教作品を残し、その楽譜に“Soli Deo Gloria”(唯神の栄光の為に)と書き記していることからも分かるとおり神のために音楽を書いた人ですが、ヘンデル王立音楽アカデミーやコヴァント・ガーデン劇場の音楽監督としてオペラ42曲と劇場用オラトリオ31曲を残し、貴族や大衆向けの劇場用の音楽を書いたことから“劇場の人ヘンデル”と言われています。

この映画ではファリネッリがその幼少期から兄と共に各都市を巡業して徐々に名声を高めて行きますが、街頭で歌うファリネッリの美声と歌唱力を偶々聴き付けたヘンデルにその才能を見出され(史実ではヘンデルの招きに応じて1734年から1737年にかけてロンドンを拠点として活動していますので、ヘンデルと出会ったときにはヨーロッパでの名声は確立されていましたが)、スターダムに伸し上がって行くという展開になっています。ファリネッリの声域は3オクターブ半あったそうですが、去勢していない現代のカウンターテナーでは出せない音域もあるため、高音域はソプラノのエヴァ・マラス=ゴドレフスカさん、低音域はカウンターテナーデレク・リー・レイギンさんが担当し、その2人の声を合成、編集して1人のカストラートが歌っているように聴かせています。優秀な録音技師によって全く違和感がないように合成、編集されているので不満はありませんが、本物のファリネッリの歌声を生で聴いた感動はいかばかりであったろうかと思いを巡らせてしまいます。この映画の中でもファリネッリの歌声を聴いて失神する貴婦人の姿が描かれていますが、実際にファリネッリの歌声を聞いて失神した女性は少なくなかったという記録が残っています。ファリネッリヘンデルの歌劇「リナルド」よりアリア「涙あふるる(私を泣かせてください)」を歌うシーンがありますが、アリアの歌詞とファリネッリの心情とが交錯し、また、その歌唱を劇場の屋根裏で聴く兄の姿(ファリネッリがスターダムに伸し上がって行くにつれ、弟と引き離されて自らの存在感も見失って行く凡庸な才能の兄の悲哀)が重なり合って1つの見所、聴き所となっています。また、ヘンデルを聖人化せずとても人間臭く描いているところは評価できますし(実際の人物像がどうであったかは別として、借金の取立てをあしらうところなど記録に残っているとおりなので、実像に近い姿が描かれているのかもしれません。)、個人的にはヘンデルがパイプオルガンの前に座って作曲しているシーンが失禁ものでした。我が家のホームシアターではこの映画の良さを十分に感得できないので、やはり音響の良い映画館で観るべき映画かもしれません。

◆映画「カストラート」よりファリネッリヘンデルの歌劇「リナルド」よりアリア「涙あふるる(私を泣かせてください)」を歌うシーンをアップしておきます。

ヘンデルのオペラ特集
ヘンデルの真骨頂はオペラにあり!そのごく一部ですが、YouTubeにアップされていたものの中から適当に見繕って、アップしておきます。

▽先ずは序曲から。オペラ劇場の雰囲気をご堪能あれ。

▽次はアリアから。ヘンデルが得手とするドラマチックなアリアをご堪能あれ。この歌手の歌唱力、演技力も秀逸!

▽次は(僕は諸事情があり見逃しましたが)最新のMETライブビューイングの映像から。最近はレパートリーの幅を広げているMETですが、バロックオペラも採り上げるようになりました。見逃した方は、そのうちWOWOWで放映しますので録画をお忘れなく。なお、2つ目の映像がカウンターテナーのアリアになります。

▽最後に、オペラ全曲が入っています。すべて観るのに1〜2時間はかかるので、隙があるときに腰を据えて観て下さい。なお、ヘンデルの特徴として「冗長」なところがありますので、飽きが来たら思い切って飛ばしてしまいましょう。
(画像なし、対訳あり)

(画像あり、対訳なし)

◆おまけ(映画「パッション」にバッハのヨハネ受難曲の冒頭合唱を付したものです。不協和音が悲痛に胸に響きます。ヘンデルの世界とは対照的です。)