ぶらあび

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終着駅 トルストイ最後の旅

【題名】終着駅 トルストイ最後の旅
【監督】マイケル・ホフマン
【脚本】マイケル・ホフマン
【出演】<ソフィア・トルストイ役>レン・ミレン
    <レフ・トルストイ役>クリストファー・プラマー
    <ワレンチン・ブルガーコフ役>ジェームス・マカヴォイ
    <チェルトコフ役>ポール・ジアマッティ
    <サーシャ・トルストイ役>アンヌ=マリー・ダフ
    <マーシャ役>ケリー・コンドン 
    <ドゥシャン役> ジョン・セッションズ
    <セルゲーエンコ役> パトリック・ケネディ ほか
【料金】TUTAYA 旧作100円
【感想】
現在、病気療養中で外出も侭ならず、診療と仕事(病床にてパソコンで仕事を処理)の合間には、本を読むか又はビデオを見るかして時間を無駄にしないようにしています。TUTAYAの旧作100レンタルで借りて再視聴したので、その感想を簡単に残しておきます。

終着駅 トルストイ最後の旅 CE [DVD]

インターネットでは辛口の批評も目にしますが、個人的には見応えのある素晴らしい映画だというのが率直な感想です。僕は高校生の頃に「戦争と平和」を読んでからトルストイに嵌り「アンナ・カレーニナ」「イワンのばか」「人生論」などの主要な作品は読んできましたが、トルストイの人となりやその生涯については頓着がありませんでした。この映画はトルストイの最晩年をフォーカスし、トルストイと彼を取り巻く人々の人間模様を通じてトルストイの実像(愛と苦悩)やトルストイ主義の葛藤(理想と現実)などを浮き彫りにしている意欲作です。トルストイ主義の形式的な面に囚われる友人のチェルトコフと、その本質的な矛盾を直観的に感じている妻のソフィアとの確執、その2人の間を揺れ動く秘書のブルガーコフの人間模様は、トルストイ(或いはトルストイ主義)が孕む葛藤を代弁し、浮き彫りにするもので見応えがあります。また、秘書のブルガーコフと恋人のマーシャとのお互いを激しく渇望する若い愛の形との対比で、トルストイとソフィアの(時に反目し疎ましく思いながらも)お互いを最も良く理解し深い絆で結ばれた夫婦愛が印象強く描かれ、ラストシーンは実に感動的でした。ソフィアは、ソクラテスの妻クサンティッペモーツアルトの妻コンスタンツェと並んで世界三大悪妻に挙げられていますが、これは後世の人がある側面だけを殊更に誇張して真実の姿を歪めて作った無責任な世評でしかなく、この映画では誰よりもトルストイのことを深く理解しながらも、家族愛の強さ故にトルストイと彼を取り巻く人々との間でヒステリックな衝突を繰り返してしまう孤独な妻の姿をレン・ミレン(映画「クィーン」でアカデミー主演女優賞を受賞)が円熟味のある演技で見事に演じ切っています。この映画を見るとトルストイの名言「家庭愛は自愛と同じである。罪悪行為の原因とはなるが、それの弁解にはならない。」が含蓄あるものに感じられます。この映画では美しいサウンドトラックと美しいロシア(ヤースナヤ・ポリャーナ)の自然も見所となっていて楽しめます。昨今は芸術がCDやDVD、CATV等で手軽に楽しめるようになり大変に便利になりましたが、作品の価値とは無関係に余りに廉価で楽しめてしまうため(懐は助かりますが)芸術の叩売りと言えるような状況に複雑な思いも感じています。芸術は見る者、聴く者に伝わって初めて価値を生むもの(完成するもの)だと思いますが、あまりに安易に芸術に触れることができてしまうため、我々、見る者、聴く者が芸術を単なる刹那的な娯楽の道具として「消費」する対象としてしか捉えなくなってしまうことを危惧しています。僕は、こうして感想を書くことで出来るだけその作品と真摯に向き合い、その作品の真価に迫りたいと心掛けていますが、作者が伝えたいこと、表現したいことをどれだけ適確に感じ取ることができているのか、単なる暇潰しとして作品を無駄に消費し、時間を無為に過すことがないよう心掛けたいと思っています。

◆映画「終着駅 トルストイ最後の旅」の予告編

◆おまけ
何故か日本ではイギリスの作曲家は人気がありませんが、僕の大好きなエルガー交響曲第1番第1楽章をアップしておきます。この曲を聴いていると胸を張って生きて行こうという気持ちになり励まされます。日本では作品の価値に拘らず特定の作曲家の特定の曲しか演奏会で採り上げられない残念な傾向が顕著です。これは集客力(有名な曲しか好まない観客の傾向的な気質、芸術の受容能力の低さ)に理由があるものと思われます。

エルガーからもう1曲。これは定番中の定番。