大藝海〜藝術を編む〜

言葉を編む「大言海」(大槻文彦)、音楽を編む「大音海」(湯浅学)に肖って藝術を編む「大藝海」と名付けました。伝統に根差しながらも時代を「革新」する新しい芸術作品とこれを創作・実演する無名でも若く有能な芸術家をジャンルレスにキャッチアップしていきます。

第81回 日本音楽コンクール ヴァイオリン部門 本選会

【題名】第81回 日本音楽コンクール ヴァイオリン部門 本選会
【出演】宮川奈々(桐朋学園大3年)
     ブラームス バイオリン協奏曲ニ長調 op.77
    大江 馨(桐朋学園ソリスト・ディプロマコース1年)
     メンデルスゾーン バイオリン協奏曲ホ短調 op.64
    坪井夏美(東京芸大1年)   
     バルトーク バイオリン協奏曲第2番
    周防亮介(東京音大付高2年)
     ブラームス バイオリン協奏曲ニ長調 op.77
    会田莉凡(桐朋学園ソリスト・ディプロマコース4年)
     バルトーク バイオリン協奏曲第2番
【演奏】東京交響楽団
    <Con>円光寺雅彦
【会場】東京オペラシティーコンサートホール タケミツメモリアル
【感想】
ここのところ諸事情により実際の演奏を聴きに行くことはできませんが、本選会の結果が出ましたので、その栄誉を湛える意味で結果をアップしておきます。会田さんは努力が報われて本当に良かったですね。寧ろ、毎年、コンスタントに入賞していましたので、それだけ安定した実力があったということなのだろうと思います。会田さんがどのように成長したのか演奏を聴いてみたいです。

第1位 会田莉凡(桐朋学園ソリスト・ディプロマコース4年)
第2位 周防亮介(東京音大付高2年)※岩谷賞(聴衆賞)
第3位 坪井夏美(東京芸大1年)
入 選 宮川奈々(桐朋学園大3年)
入 選 大江 馨(桐朋学園ソリスト・ディプロマコース1年)

他部門の結果
http://blog.mainichi-classic.jp/?cid=1

本選の模様は、以下の予定で放映されますので、放送を聴いて感想を書いてみたいと思います。

【NHK−FM】(午後7時30分〜9時10分)
 11月19日(月):ピアノ部門(10月28日収録)
 11月20日(火):バイオリン部門(10月27日収録)
 11月22日(木):声楽部門(10月24日収録)
 11月26日(月):トランペット部門(10月25日収録)
 11月27日(火):クラリネット部門(10月23日収録)
 11月28日(水):作曲部門(10月26日収録)
【BSプレミアム】(午前6時00分〜6時55分「クラシック倶楽部」)
 11月30日(金):ピアノ部門(10月28日収録)
 12月 3日(月):バイオリン部門(10月27日収録)
 12月 4日(火):声楽部門(10月24日収録)
 12月 5日(水):トランペット部門(10月25日収録)
 12月 6日(木):クラリネット部門(10月23日収録)
 12月 7日(金):作曲部門(10月26日収録)
【Eテレ】(午後9時00分〜10時00分「らららクラシック」)
 12月 2日(日):全部門

なお、毎年、注意事項として「演奏はすべて暗譜のこと」と指示されていますが、最近はコンチェルトでも楽譜を置いて演奏するソリストも多く、果たして、この指示に如何なる意義があるのか主催者に聴いてみたい気もします。楽譜に縛られるのではなく楽譜から自由になるという意味で自分の音楽になるまで楽譜を読み(弾き)込むべしということなのか(但し、コンクールでは“コンクール弾き”という言葉があるとおり、如何に楽譜に忠実に演奏できたのかが重視される(減点されない)傾向にあるので、これは理由にならないような気も…)、又はいずれの課題曲も演奏機会の多い定番曲なので自分のレパートリーとして暗譜するくらい弾き込んでおくべしということなのか(但し、暗譜していることと音楽の本質を捉えていることとは、必ずしも相関関係にあるとは言えず、ひとつの演奏スタイルといった程度の意味しかないような気も…。また、暗譜しなければ充分に他の演奏者と呼吸を合わせて生き生きとした音楽を奏でることができないのかと言えば、究極のアンサンブルと言われる弦楽四重奏の演奏では楽譜を見ながら演奏することが通例であり、暗譜とアンサンブルの質との間には何の因果関係もないような気も…。)、些か合点がいかないものを感じます。毎年、コンクールに行く度に「果たしてコンクールの意義とは…?」と釈然としない疑念に悶々とさせられますが、この暗譜の要否も含めて、一体、コンクールでは演奏者の何を審査しようとしているのか、その評価にはどんな意義があるのか分からなくなることもあります。組織における人材活用にも共通しますが、1つの尺度に当て嵌めて他人を評価することは管理手法としては効率的(一見、客観的で公平、シンプルで管理者側にとっては面倒でない)ですが、寧ろ、コンクールが個々の演奏者の個性やポテンシャルを充分に引き出すことができる場(機会)になり得ているのだろうかという視点で見直してみる必要があるのではないかと個人的には感じています(浜松国際ピアノコンクールではユニークな試みも見られます。)。この点、象徴的な意味で、暗譜の要否は演奏者の自由に委ねても構わないのでないかと思いますし、我々聴衆のコンクールへの接し方も含めてコンクールが若い演奏者の個性やポテンシャル(才能)を摘んでしまう場にならないように気を付けなければならない(コンクールの順位ばかりではなく、個々の演奏者の演奏の中身に耳を傾けられる存在でありたい)と感じているこの頃です。

◆おまけ
課題曲はいずれも定番曲ですが、たぶん誰も選ばないであろうドボルザークのヴァイオリン協奏曲をアップしておきます。

ドボルザーク交響曲と言えば、演奏会では第7番から第9番までしか採り上げられませんが、第6番以前にも良い曲が多く、何故、演奏されないのか不思議です。

ドボルザーク室内楽も演奏される曲が偏っていますが、ピアノ曲などはもう少し演奏される機会があっても良いのではないかという気もします。