【題名】ベジャール、そしてバレエはつづく
【監督】アランチャ・アギーレ
【出演】ジル・ロマン
エリザベット・ロス
モーリス・ベジャール・バレエ団員
ジョルジュ・ドン
ショナ・ミルク
ブリジット・ルフェーブル ほか
【会場】Bunkamuraル・シネマ(渋谷)
【料金】1800円
【感想】
少し昔の映画になりますが、映画「パリ・オペラ座のすべて」、映画「エトワール」に続く、バレエ3部作の最後の作品「ベジャール、そしてバレエはつづく」を観てきました。天才振付家ベジャールが創設したベジャール・バレエ団はベジャールの死に際して後事(芸術監督)を託されたベジャールの秘蔵子にして名エトワールであったジル・ロマンを中心にその存続をかけて苦悩、模索する姿を描いたドキュメンタリー作品です。
この映画のなかでベジャールの言葉が紹介されていますが(「ダンサーはベッドから起きた子供のようなもの」「ダンサーは10年間に亘ってバレーバーの前で肉体と精神を作り上げ、残るのは子供の動きだ」など)、世阿弥がこれと同じこと(「児姿は幽幻の本風なり」「児姿を三体に写して二曲をなせば、おのづから幽幻の見風、三体に現はるべし」など)を語っていてとても興味深かったです。また、あるダンサーが「無我の舞い」について語っていましたが、世阿弥もこれと同じことを語っているのを思い出し、バレエと能は表面的な表現手法は間逆でも(バレエは激しい動きで観客の外側から強くアピールするプラスの美学を基調とし、狩猟民族の名残りから高く飛び跳ねる動作で空間を縦方向に使うのに対し、能はできるだけ無駄なものを削ぎ落として観客の内側からイマジネーションを引き出すマイナスの美学を基調とし、農耕民族の名残りから膝を曲げて腰を落として横方向に空間を使うなど)、その本質的な部分では共通しているところがあるのかもしれません。ベジャールの死後、初の本格公演でジル・ロマンが振り付けを行った新作「アリア」(グールドが弾くゴルトベルク変奏曲がBGMとして使われています)が上演されたところで映画が終わり、ベジャール・バレエ団の行く末や方向性について結論めいたことには触れられていません。その意味ではこれからがベジャール・バレエ団の正念場であり、この映画はベジャール・バレエ団の始まりの終わりを示す一里塚に過ぎないということでしょう。
▼知への旅 ダンスの世紀 古典バレエからベジャールへ
さすがにベジャールを知らない人はいないと思いますが、迂闊にもベジャールを知らないという方のために、(NHKの承諾を得てアップしているのか判然としませんが)NHK教育「知への旅」ダンスの世紀(5回シリーズ)の映像をアップしておきます。勉強しなはれ..