大藝海〜藝術を編む〜

言葉を編む「大言海」(大槻文彦)、音楽を編む「大音海」(湯浅学)に肖って藝術を編む「大藝海」と名付けました。伝統に根差しながらも時代を「革新」する新しい芸術作品とこれを創作・実演する無名でも若く有能な芸術家をジャンルレスにキャッチアップしていきます。

シャネル&ストラヴィンスキー

【題名】シャネル&ストラヴィンスキー
【監督】ヤン・クーネン
【出演】<ストラヴィンスキーマッツ・ミケルセン
    <シャネル>アナ・ムグラリス
    <妻カリーナ>エレーナ・モロゾヴァ ほか
【料金】TUTAYA 旧作100円
【感想】
病床からの投稿です。少し昔に見た映画になりますが、久しぶりにDVDで「シャネル&ストラヴィンスキー」を観たので、その感想を書いてみたいと思います。ネットでは心ない酷評なども見かけますが、これはなかなか面白い映画だと思います。なお、何故かこの映画は「R18指定」ですが、僕が親なら中学生の子供にも観せると思います。ナンセンス。

シャネル&ストラヴィンスキー [DVD]

この映画はバレエ音楽春の祭典」の初演シーンから始まりますが、ストラヴィンスキーやモントゥーの手記などに沿って史実に忠実に再現されたもので非常に興味深いです。当時の観客はストラヴィンスキーの斬新な音楽だけでなくニジンスキーの前衛的な振付にも拒否反応を示して騒ぎ出したことが再現されています。また、モントゥーが楽団員にメロディーを忘れてリズムだけを意識しろと指示しているところやニジンスキーが舞台袖で半狂乱になってテンポを叫んでいるところなども克明に再現されていて興味が尽きません。この春祭の初演シーンだけでも見る価値は十分にあると思います。

シャネルとストラヴィンスキーの関係について、どこまでが史実なのか判然としないところはありますが、ストラヴィンスキーが2年間に亘ってシャネルの邸宅に居候していたことは事実ですし、ストラヴィンスキーがシャネルに曲を捧げている事実などからも、恋多き女シャネルとの間に情事がなかったとは言い切れないと思います。いずれにしても、この映画はシャネルとストラヴィンスキーの心理面まで掘り下げられた人物描写がよくできている作品で、生真面目で几帳面な性格の家庭的なストラヴィンスキーと、女性的な面と男性的な面の両面を併せ持つ奔放で孤高なシャネルという好対照な人物像が浮き彫りにされ、しかし、時代の寵児として常に斬新なものを生み出す創造者(芸術家)としての存在に共感し惹かれ合う二人の関係がデリケートに描かれています。シャネルが香水『No.5』を開発する模様も描かれており、グラース(南フランス)の美しい街並みと共に見逃せません。(加えて、シャネル役のアナ・ムグラリスさんの肢体が目も眩むほどの美しさなのでこれもお見逃しなく!)なお、この映画ではCHANELが衣装を担当したそうですが、シャネルが身に着けていた当時の衣装が現代でも全く古びて見えず、「モードは廃れても、スタイルは廃れない。」というシャネルの名言のとおりかもしれませんね。現代は、モードは氾濫していますが、スタイルと呼べるような歯応えのあるものは生まれていないような気がします..。

▼映画「シャネル&ストラヴィンスキー」からバレエ「春の祭典」の初演シーン(一部抜粋 ※観客が騒ぎ出すシーンは含まれておりません。)

モーツァルト ピアノ協奏曲第23番より第二楽章
今日は心に染みる音楽をお送りします。モーツァルトのオペラ、後期交響曲、後期ピアノ協奏曲には名曲が多いです。(iPhoneからは上手く視聴できないようなので、PCで視聴して下さい。)

おまけ