ぶらあび

ジャンルを超え、地域を超え、時代を超えて「時間芸術」(音楽、文学、話芸、香道…)、「空間芸術」(建築、彫刻、陶芸、絵画、書道、華道…)、「総合芸術」(舞踊、演劇、映画、茶道…)など芸術全般の感想を書き綴ります。(オススメ公演情報等はスマホ版で表示されないのでPC版でご覧下さい。)

天才フランツ・リストの愛の生涯と芸術「パトロネージュ、そして始まる恋」

【演題】フランツ・リスト生誕200年記念企画
    天才フランツ・リストの愛の生涯と芸術
    パトロネージュ、そして始まる恋
【脚本】山本実樹子
【演出】松田光輝
【出演】フランツ・リスト役 斉藤嵩也
    カロリーネ・ヴィトゲンシュタイン役 山本実樹子
    友人M 松田光輝
    エヴァンゲリス 宮澤等
【演奏】<Vc>宮澤等
    <Pf>山本実樹子
    <Org>二川直彦
【曲目】リスト アルカデルトのアベマリア
        忘れられたロマンス
        ゴンドリエラ〜ゴンドラを漕ぐ女
        モーツァルトのアヴェ・ヴェルム・コルプス(リストによるピアノ編曲版)
        サン=サーンスの死の舞踏(リストによるピアノ編曲版)
        愛の夢第1番〜天上の愛
        愛の夢第3番〜愛し得る限り愛せよ
        ハンガリー狂詩曲第12番
        主の家に行きて
        ノンネンヴェルトの僧房
        われらの主イエス・キリストの変容の祝日に
        バッハのカンタータ「泣き、嘆き、悲しみ、おののき」とロ短調ミサの「十字架につけられ」の通奏低音による変奏曲
        ラ・カンパネラ
【会場】アスピアホール(幡ヶ谷)
【開演】17時
【料金】7000円(第1部と第2部の通し券)
【感想】
お盆を過ぎれば残暑お見舞いですが、これから暑さが本格化してくる季節です。避暑地へバカンスに洒落込んでいる方も多いと思いますが、僕は不本意ながらズーッと仕事です。さて、第一部公演の「マリー・ダグーへの約束」に続き、第二部公演の「パトロネージュ、そして恋の始まり」を鑑賞しました。この作品はリストがカロリーネと出会ってからの後半生を描くもので、リストの音楽家としての側面だけではなく人間的な側面まで深堀された内容となっており、リストが抱えるコンプレックス、葛藤や理想など多様な内面に切り込んで行く見応えのある作品でした。友人Mとの対話を通じて自己矛盾を抱えるリストの等身大の姿が浮き彫りにされ、さらにリストの心の内奥へと踏み込んで行くモノローグが展開されていきます。最後にバッハの通奏低音による変奏曲が演奏されるなか、リストは信仰の果てに「孤独の中の神の祝福」(←このフレーズはリストの作品名からの転用)を受けて音楽の中に「救済」を見出して行く構成になっていましたが、晩年にリストが到達した心境に迫る素晴らしいエンディングであったと思います。山本さんは慈愛溢れる演奏で「救済」を音楽によって見事に表現する好演であったと思います。これまでリストの作品のヴィルトゥオジーな側面ばかりに注目してきましたが、もっとリストの心に耳を澄まさなければいけないのかもしれません。そんなことを考えさせられる感慨深い作品でした。なお、この作品は独白劇を主体としており、観客を芝居に惹き付けられるか否かは専ら役者の力量に負うところが大きいと思いますが、斉藤さんの迫真の演技が白眉で、プロの役者さんというのは凄まじいエネルギーを持っていますな。伝えることの難しさと醍醐味を味わえた充実した舞台でした。ヴラヴォー!また、宮澤さんのエヴァンゲリスト(この作品では福音史家という意味ではなくナビゲーターという意味)が妙にハマリ役であったことを付記しておきましょう。敢えてあまり詳しいことは書きませんので、ご興味のある方は再演をご覧下さい。このように多面的に作曲家や作品にアプローチすることは、より豊かな作品鑑賞の手助けとなり大変に有意義だと感じています。なお、この続編として、一昨年に「フランツ・リスト物語」、昨年に「降りそそぐ光の中で」が公演され盛会だったようですが、残念ながら僕は観に行くことができませんでした。是非、再演が待ち望まれます。

http://liszt-concert.at.webry.info/

◆おまけ
お盆前のしめやかな夜に心静かに耳を傾けるのに向いているリストの曲をリストアップしました。