大藝海〜藝術を編む〜

言葉を編む「大言海」(大槻文彦)、音楽を編む「大音海」(湯浅学)に肖って藝術を編む「大藝海」と名付けました。伝統に根差しながらも時代を「革新」する新しい芸術作品とこれを創作・実演する無名でも若く有能な芸術家をジャンルレスにキャッチアップしていきます。※※拙サイト及びその記事のリンク、転載、引用などは固くお断りします。※※

ワーグナー 偉大なる生涯(原題:WAGNER)

【題名】ワーグナー 偉大なる生涯(原題:WAGNER)
【監督】トニー・パーマー
【脚本】チャールズ・ウッド
【出演】第一部
 <ワーグナーリチャード・バートン
      <コジマ>ヴァネッサ・レッドグレーヴ
      <ミンナ>ジェマ・クレイヴン
      <カール・リッター>ガブリエル・バーン
      <マティルデ>マルト・ケラー
      <リスト>エッケハルト・シャル
    第二部
      <ワーグナー>リチャード・バートン
      <コジマ>ヴァネッサ・レッドグレーヴ
      <ミンナ>ジェマ・クレイヴン
      <ブフォルテン>ラルフ・リチャードソン
      <フィスターマイスター>ジョン・ギールグッド
      <ブフォイアー>ローレンス・オリヴィエ
      <フォン・ビューロー>ミゲル・ハンツ=ケストラネク
      <ルードヴィッヒⅡ世>ラズロ・ガルフィ
    第三部
      <ワーグナー>リチャード・バートン
      <コジマ>ヴァネッサ・レッドグレーヴ
      <フォン・ビューロー>ミゲル・ハンツ=ケストラネク
      <ルードヴィッヒⅡ世>ラズロ・ガルフィ
      <リヒター>スティーブン・オリヴァー
      <ニーチェ>ロナルド・ピックアップ
【演奏】<Orc.>ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
    <Cond.>サー・ゲオルグショルティ
【撮影】ヴィットリオ・ストラーロ
【収録】1983年年度作品
【放送】クラシカジャパン
     第一部 8月 4日21:00〜23:40
     第二部 8月11日21:00〜23:55
     第三部 8月18日21:00〜23:45
【感想】
メリークリスマス🎶 どんなクリスマスをお過ごしでしょうか。今日12月25日をイエスの誕生日(降誕日)と勘違いしている人も多いと思いますが、イエスの誕生日は明らかではなく(聖書にも書かれていない)、正しくはイエスの誕生(降誕)を祝う日です。因みに、サンタクロースは聖ニコライが起源とされていますが、その昔、聖ニコライが貧しくて娘を嫁がせることができない家の煙突から金貨を投げ入れて救ったという逸話に由来し、キリストの誕生(降誕)を祝う日にプレゼントを贈る習慣が生まれたと言われています。そのキリストの生誕(降誕)から約1200年後に我等の千葉県鴨川市にある誕生寺日蓮聖人の生家跡)で日蓮宗の開祖である日蓮聖人が生誕(降誕)しています。



上段左から誕生寺の仁王門、祖師堂と見事な枝振りの松、誕生(降誕)した日蓮聖人が産湯を使った誕生水(湧き水)、誕生堂、日蓮聖人御幼像、下段左から寅さんが産湯を使った寅さんの誕生寺こと柴又帝釈天(日蓮宗)の二天門、帝釈堂、鐘と寺紋(映画で使用されているとらやの暖簾の家紋は帝釈天の寺紋と同じ)、柴又に実在するとらや(最初の数回は映画の撮影でも使用、草だんご300円)、とらやの店内にある階段(映画の撮影でも使用、寅さんの部屋へと通じる奥の階段とは別のその隣の部屋へ通じる表の階段)

日蓮聖人は清澄寺へ入山し、鎌倉に建長寺が建立された年と同年(1253年)に旭が森の山頂に立って朝陽を拝みながら「南無妙法蓮華経」と唱えて日蓮宗の立宗宣言をしたと言われています。日蓮聖人は「立正安国論」において「正法を立て国土を安穏ならしめる」と説いて「南無妙法蓮華経」という7文字のお題目を唱えて「平らかなる心」を培うことで国土は安穏になるという趣旨のことを書かれていますが、お題目を声に出して唱えること(唱題行)で自らの心の中にも宿っているはずの「仏の心」を呼び覚ますという教えのようです。お題目を唱える際に木魚、木柾や題目太鼓(団扇太鼓)を打ち鳴らしてリズムを整えることで、自らの呼吸を整え、自らの心を整えて信仰を培うという意味で、唱題にはリズム(ここで言うリズムとは、メトロノームが刻む人工的なリズムというよりは、自然の摂理を支配する秩序(心臓の鼓動のようなものと言い換えることができるかもしれませんが)に共鳴するということではないかと思います。)が大切だと言われています。この点、日本の伝統音楽には西洋音楽のような明確なメロディーやハーモニーはなく主にリズム(上記と同旨の日本的なリズム)や節によって構成されますが、このような「祈り」(唱題や声明など)が「歌舞音曲」へと発展し、やがて歌舞伎の黒御簾音楽・下座音楽(舞台下手の黒塗りの御簾を垂らした黒板塀に囲まれた中で演奏する歌舞伎の演出効果を高めるための音楽で、その楽器の1つが団扇太鼓)へと昇華した文化的背景に思いを馳せると大変に興味深いものがあります。なお、大利根河原の決闘を描いた「座頭市物語」(第一作)の中で飯岡一家が笹川一家へ殴り込みを掛ける場面がありますが、危難を逃れようと題目太鼓(団扇太鼓)を叩く村民の姿が描かれており、読経や写経を行わなくても「南無妙法蓮華経」の7文字のお題目を唱えるだけで救われるという日蓮宗の教えが当時の読み書きのできない村民の間にも広く浸透していたことを窺わせるエピソードとして印象深く思い出されます。また、日蓮宗の布教は“浪の伊八”の数々の作品をはじめとした仏教美術の発展や、日蓮宗の学問所である三大檀林(飯高檀林中村檀林小西檀林)に代表される教育の普及振興にも多大な影響を与えていますので、いつか機会があったら詳しく触れてみたいと思います。因みに、今年の大河ドラマ「八重の桜」では同志社大学が日本で初めて設立されたキリスト教を普及するための大学として採り上げられ注目を集めましたが、仏教を普及させるために日本で最も古く設立された大学の1つである立正大学(その校名は日蓮聖人の「立正安国論」に由来)は三大檀林の1つ飯高檀林を前身としており、「立正の精神」を理念として日本の宗教・思想教育を支え続けて来た功績を忘れることはできません。(この話題を敢えてクリスマスの日に採り上げてみました。)



上段左から日蓮宗開祖の大本山清澄寺(千葉県鴨川市)の仁王門、日蓮聖人が清澄寺に入山した当時からあった樹齢800年以上の千年杉、大堂と観音堂、日蓮聖人が吐かれた血が笹の葉に飛び散って今でも葉に斑点が残る凡血の笹、若き日の日蓮聖人が心身練磨のために修行した練業場、下段左から日蓮宗の三大檀林(学問所)のうち、霊験あらたかな雰囲気が立ち込める飯高檀林(千葉県匝瑳市)の講堂と立正大学発祥の碑、中村檀林(千葉県香取郡多古町)の山門から本堂へと真っ直ぐに伸びる参道とその脇に立つ信仰の道しるべ、小西檀林(千葉県大網白里市)の中門と講堂

極真空手創始者である大山倍達は1948年に清澄山に入山し、約18ケ月間の修行の末に極真空手を生み出しました。大山倍達が山籠もりをした際の体験として「人間にとって最も怖いのは、飢えと孤独だ」と語っていますが、自らを極限の状態に追い込み自らに打ち克つことによって強い精神と肉体を培い、その並々ならぬ闘争心が下山直後に千葉県館山市で47頭の牛と対決し仕留めた逸話となって現れたのだろうと思います。その意味で、それまで主流を占めていた競技としての空手ではなく、あくまでも実戦としての空手を志向し、いわば空手に魂を吹き込んだ真の武道家と言えるかもしれません。その原点が此処にあるのかと思うと身の引き締まる思いがします。


左から清澄寺バス停前にある極真空手発祥の地の碑、大山倍達が飢えと孤独に克って約18ケ月間の修行を全うした極真空手発祥の地、大山倍達の記念碑、大山倍達が幾度も眺めたであろう極真空手発祥の地から臨む鴨川に沈む夕陽

さて、生誕と言えば、今年生誕200年を迎えたワーグナーの偉大なる生涯を描いた伝記映画がクラシカジャパンで放送されたので、その感想を簡単に残しておきたいと思います。この伝記映画はワーグナーの孫ヴォルフガング・ワーグナーの協力を得て制作された約8時間に及ぶ一大叙事詩で、楽劇「ニーベルングの指環」で定評があるショルティー@ロンドンフィルが演奏を担当しています。因みに、先日から、ワーグナー生誕200周年を記念してルートヴィヒⅡ世とワーグナーの関係を描いた映画「ルートヴィヒ」が公開されていますので、こちらもご興味がある方はいかが。


http://wagner-movie.com/

http://www.ludwig-movie.com/

現在、感想を執筆中。続く。

◆おまけ
ワーグナートリスタンとイゾルデ第三幕全曲をショルティー@VPOの演奏でどうぞ。