大藝海〜藝術を編む〜

言葉を編む「大言海」(大槻文彦)、音楽を編む「大音海」(湯浅学)に肖って藝術を編む「大藝海」と名付けました。伝統に根差しながらも時代を「革新」する新しい芸術作品とこれを創作・実演する無名でも若く有能な芸術家をジャンルレスにキャッチアップしていきます。※※拙サイト及びその記事のリンク、転載、引用などは固くお断りします。※※

いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2023(5月5日)とクロスオーバーする加賀文化<STOP WAR IN UKRAINE>

▼クロスオーバーする加賀文化(ブログの枕)
GWの連休を利用して観光がてら「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2023」に来ています。石川県は、日本三霊山の1つである白山を水源とする手取川が上流から多くのを流すであることから命名されたものですが、その中心地にある金沢市には詩人・室生犀星(ライツネーム)の由来になっている犀川が流れ、その水流を利用した日本四大用水の1つである辰巳用水金沢市街を流れていることから水の都という異名も持っています。水が美味ければ、当然、酒も美味いということで、昨晩、酒を求め肴を求めて金沢の街を彷徨っていたら、したたかに酔いつぶれ、ブログの枕を更新できませんでしたが、音楽祭の合間に金沢周辺を観光しましたので、歩き周れた範囲内で金沢の文化的な魅力についてクロスオーバーの観点から少しばかりご紹介してみたいと思います。なお、音楽祭の会場(有料公演又は無料公演)があった場所の周辺で時間が許す限りで観光しましたので、来年観光がてら音楽祭に行ってみたいと考えている方のために、(おそらく来年も同じ演奏会場が設けられると思いますので)演奏会場から観光地までの移動手段と所要時間を併記しておきます。今回歩き周れなかった場所は、是非、次の機会に伺いたいと思っています。
 
【会場】石川県立音楽堂(石川県金沢市昭和町20−1)
【観光】近江町市場(石川県金沢市上近江町50):徒歩15分
近江町という地名は1501年に蓮如上人の命を受けた祐乗坊が近江商人と共に移住してきたこと(場所のクロスオーバー)に由来しています。全国的に有名な店も多く早朝6時頃から行列ができます。
【会場】北國新聞赤羽ホール(石川県金沢市南町2−1)
【観光】尾山神社(石川県金沢市尾山町11−1):徒歩5分
前田利家公とお松の方が祀られている神社で、明治8年に建設された神門は堅固な構造とするために和漢洋の折衷(文化のクロスオーバー)になったそうです。朝陽に映えるステンドグラスが美しい!
【観光】長町武家屋敷跡(石川県金沢市長町1-3-12):徒歩5分
江戸時代に中級武士が暮らしていた武家屋敷跡ですが、令和時代も実際に住人が暮らしています(時代のクロスオーバー)。その歴史的な景観から映画の撮影に使われることも多い人気のスポットです。
【会場】金沢市役所(石川県金沢市広坂1-1-1)
【観光】石川四高記念文化交流館(石川県金沢市広坂2ー2ー5):徒歩1分
鈴木大拙西田幾多郎を排出した旧制石川第四高校の校舎で、国の重要文化財に指定されています。金沢の街並みには近世建築、近代建築及び現代建築が並存しています(時代のクロスオーバー)
【観光】金沢21世紀美術館(石川県金沢市広坂1-2-1):徒歩1分
現代美術を収蔵している美術館ですが、この隣には金沢能楽美術館と石川県立美術館があるので、同じエリア内に中近世美術、近代美術及び現代美術が展示されています(時代のクロスオーバー)。
【観光】金沢能楽美術館(石川県金沢市広坂1-2-25):徒歩1分
昔、金澤能楽堂があった場所で、この隣には金沢21世紀美術館と石川県立美術館があるので、同じエリア内に中近世美術、近代美術及び現代美術が展示されています(時代のクロスオーバー)。
【観光】鈴木大拙館(石川県金沢市本多町3-4-20):徒歩10分
前回のブログ記事で触れたとおり禅や浄土宗の東洋思想を西洋人に理解できるように哲学まで昇華し、それを世界中に広めてJ.ケージの作品など様々な影響を与えています(文化のクロスオーバー)。
【観光】兼六園(石川県金沢市兼六町1−22):徒歩10分
日本三大名園の1つで、宋代の書物「洛陽名園記」でつの優れた景観をね備えることが名園の条件とされ、その全てを備えているので兼六園と名付けられました(文化のクロスオーバー)。
【観光】金沢城(石川門)(石川県金沢市丸の内1−1)徒歩10分
金沢城浄土真宗一向宗)の寺院として創建された尾山御坊(金沢御堂)の跡地に造営されており、クロスオーバーする加賀文化の中心拠点となった場所です。金沢の地名の由来は城霊です。
【会場】イオンモール白山(石川県白山市横江町5001)
【観光】白山比咩神社(石川県白山市三宮町二105−1):車30分
日本三大霊山の1つの白山をご神体とする白山神社の総本山で、永平寺白山権現鎮守神とています(宗教のクロスオーバー)。なお、僕の先祖は白山権現分祀し、某所に白山神社を創建しています。
【会場】なし(※以下、クロスオーバーとは関係なく興味本位で赴いた場所)
【観光】石川県立能楽堂(石川県金沢市石引4-18-3)
現在の金沢能楽堂は、1932年に能楽師・二代目佐野吉之助が再建した金沢能楽堂の本舞台を石川県が譲り受けて現在地に移築したもので、杜若像(佐野吉之助がモデル)が建立されています。
【観光】金沢蓄音器館(石川県金沢市尾張町2-11-21)
金沢市内でレコード店を営んでいた故・八日市屋浩志さんが収集した蓄音器540台、SPレコード2万枚のコレクションが展示されており、現在も寄贈等によりコレクション数が増加しています。
【観光】ひがし茶屋街(石川県金沢市東山1-14-9)
大人の嗜みである芸者遊びなど行う茶屋文化が金沢で盛んでしたが、現在でもその情緒豊かな街並みが残されており、五木寛之作「朱鷺の墓」の舞台としても描かれています。
【観光】加賀友禅燈ろう流し本部(石川県金沢市東山1-18-26)
浅野川(女川)の友禅流しに見立て、5月4日に浅野川(女川)の鯉流しが開催されていたので立ち寄ってみました。なお、観光客には、友禅染、輪島塗や九谷焼に加えて金箔ソフトが人気です。
【観光】鏡花記念館(石川県金沢市下新町2-3)
泉鏡花の生家跡に記念館が建立されており、その直ぐ近くには泉鏡花の小節「化鳥」や「照葉狂言」の舞台として描かれている浅野川(女川)に架かる中の橋が現存しています。
【観光】西田幾多郎記念館(石川県かほく市内日角井1)
主客を分別して世界を捉える西洋思想と主客を包括して世界を捉える東洋思想を融合し、主客が分離する前の原初的な「純粋経験」を見直して、それを実践することが善であると説いています。
 
最後に、この音楽祭を企画及び運営されたスタッフ、ボランティアや音楽家の皆さんに心から謝意を申し上げます。色々なところにおもてなしの心を感じることができた音楽祭で、風と緑を感じながら音楽に酔いしれる3日間を楽しむことができました。なお、石川県立音楽堂の前でブレイキンやヒップホップダンスの練習をしている若者の姿を沢山見掛けましたが、現代音楽等のコンテンポラリー系と同様に、今まさに石川県で育まれている新しい文化を紹介する機会が設けられれば、客層のクロスオーバーも生まれて石川県らしい更に充実した音楽祭になるのではないかと感じます。それくらいこの音楽祭には期待しています。
 
 
▼いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2023(5月5日)
▼筝のしらべで広がる 邦楽の愉しみ
【演目】A.ドボルザーク ユモレスク
    J.ブラームス ハンガリー舞曲
    沢井忠夫 黒田節幻想曲
     <筝>石川県箏曲連盟
     <書道>斎藤千霞
     <横笛>藤舎秀代
     <日舞>藤間信乃輔
【場所】石川県立音楽堂 邦楽ホール
【日時】5月5日 10時00分~
【料金】2000円
【一言感想】(288文字以内/演目)
古典筝曲の演奏後、和洋のクロスオーバーとして筝(十三弦、十七弦)とフルート及びチェロの合奏でユーモレスク及びハンガリー舞曲が演奏されましたが、調弦可能な筝と西洋楽器の相性の良さを感じさせる好演でした。続く、ジャンルのクロスオーバーとして横笛の演奏に合わせて「百華斎放」(「斎」は書道家の名前から)の4文字が揮毫され、花々が一斉に咲き誇るように芸術も色々なものが発信されることが大切だという願いが込められたこの音楽祭に相応しい書です。最後に、古典と現代のクロスオーバーとして黒田節(沢井忠夫編曲)に合わせて槍舞が披露され、その洗練された所作の美しさに酒ではなく息を吞みました。
 
▼ジュニアオーケストラ公演
【演目】B.バルトーク ルーマニア民族舞曲
    李哲芸 廟埕~テンプル・スクエア
      <指揮>許忠淳
      <Orc>台湾宜蘭ジュニアオーケストラ
    W.モーツァルト ディベルティメント変ロ長調
      <指揮>なし
      <Orc>福井ジュニア弦楽アンサンブル
    B.バルトーク 「子供のために」より10のやさしい小品
      <指揮>中川洋司
      <Orc>ジャスタ・イン・トヤマ・ジュニア
    A.ドヴォルザーク 交響曲第9番ホ短調新世界より」から第四楽章
      <指揮>松井慶太
      <Orc>石川県ジュニアオーケストラ
    A.ドヴォルザーク スラヴ舞曲第2集より第2番ホ短調
    A.ドヴォルザーク スラヴ舞曲第2集より第1番ハ長調
      <Orc>合同
【場所】石川県立音楽堂 交流ホール
【日時】5月5日 13時30分~
【料金】500円
【一言感想】(288文字以内/演目)
この音楽祭に参加した台湾、福井、富山及び石川のジュニアオケの演奏を聴くことにしました。台湾:海外遠征で難曲に挑戦し、ハンガリー民族音楽の魅力と台湾の民族音楽の魅力の違いを上手く表現する素晴らしい演奏でした。福井:指揮者を置かないアンサンブルですが、実にモーツァルトらしい軽やかで清澄な響きによる正統派のアンサンブルを楽しめした。富山:トラは対象外として、少し緊張していたのかやや演奏に硬さが感じられる部分もありましたが、合奏力のある演奏を楽しめました。石川:ザッツに乱れがなく豊かなハーモニーも感じられる非常に精度が高い演奏で、石川県の音楽人材の分厚さを見せつけられました。
 
 
◆シリーズ「現代を聴く」Vol.22-3日目(台湾人)
シリーズ「現代を聴く」では、1980年以降に生まれたミレニアル世代からZ世代にかけての若手の現代作曲家又は現代音楽と聴衆の橋渡しに貢献している若手の演奏家で、現在、最も注目されている俊英を期待を込めてご紹介します。なお、「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2023」に3日間参加する予定なので、今回は1日毎に1人づつご紹介します。
 
▼鄭伊里の「Touch,duo」(2019年)
台湾人現代作曲家の鄭伊里(1982年~)は、国立台湾師範大学を卒業し、エレクトロニカサウンドスケープ、ビジュアルアート、パフォーマンスやインスタレーションを利用した作品が特徴です。この動画は、水の性質を利用したインスタレーションで、音や音楽を聴覚的だけではなく視覚的(及び触覚的)に感じるという面白い着想の作品で「Touch」シリーズとして複数の作品があります。音や音楽は空気を伝わる振動を耳が知覚して電気信号に変換し、それを脳が認知(創作)しているものですが、音や音楽の形を感じることができます。