映画「Helene」(邦題:魂のまなざし)<STOP WAR IN UKRAINE>
▼世界の社会人の休日(主要地域10ケ国の土日を除く祝祭日数及び有給休暇日数の比較)下表を見ると、アジアでは祝祭日数が多く有給休暇日数が少ない傾向があるのに対し、ヨーロッパでは有給休暇日数が多く祝祭日数が少ない傾向があることが分かります。アジア人はアニバーサリーとして短期休暇を頻繁に取得する傾向がある(よって、有給休暇の取得率も低い)のに対し、ヨーロッパ人はバケーションとして長期休暇を纏めて取得する傾向がある(よって、有給休暇の取得率は高い)ことから、このような違いになって現れているようです。この背景には、アジア人に多い農耕民族は農作業の合間に頻繁に短い休息を取る行動パターン(少しづつ農作業を進めるので仕事をダラダラと処理し、労働生産性は低い傾向)が文化として根付いているのに対し、ヨーロッパ人に多い狩猟民族は獲物を捕るまで猛烈に動き回りその後は次の狩りまで長い休息を取る行動パターン(一気に獲物を仕留めるので仕事をテキパキと処理し、労働生産性は高い傾向)が文化として根付いていることに由来していると言われています。よって、日本人はリフレッシュ休暇のような長期休暇は持て余してしまうことが多く、アニバーサリー休暇や週休三日制のような短期休暇を頻繁に取得できる制度を好むという調査結果も出ています。※祝祭日の日数はJETROのWebページ、有給休暇日数は各国の労働法制を参照※有給休暇の取得率はエクスペディアの国際比較調査等を参照▼世界の働き方改革(主要地域の比較)上述のとおりヨーロッパ人はバケーションとして長期休暇を纏めて取得する傾向があることからワーケーション(Workcation=Work+Vacation:テレワーク等を活用してリゾート地などで余暇を楽しみながら仕事を行うこと)も普及していますが、アジア人はアニバーサリーとして短期休暇を頻繁に取得する傾向があることから、あまりワーケーションは普及していないようです。しかし、上述のとおり新しい知覚(体験)は人間の創造力を発揮し易くする効用があることが指摘されており、今後、日本でもワーケーションが積極的に採り入れられることになるのではないかと考えられています。
①安房神社(千葉県館山市大神宮589) ②菱川師宣記念館(千葉県安房郡鋸南町吉浜516) ③岡倉天心邸(五浦海岸)(茨城県北茨城市大津町727−2) ④鹿野山九十九谷(千葉県君津市鹿野山118) |
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①安房神社/安房神社には天岩戸隠れの際に八尺瓊勾玉(ヤサカニノマガタマ)を作ったとされる美術の神様・櫛明玉命(クシアカルタマノミコト)が祀られており、美大の合格祈願やアーティスト、美容関係者等から篤い信仰を受けています。日本には芸能の神様を祀る神社は多いのですが、美術の神様を祀る神社は非常に少なく関東では安房神社(千葉)と比々多神社(神奈川)の2社があるのみです。また、千葉には日本で唯一の料理の神様を祀る高家神社があり、全国から料理関係者が参詣しています。 | ②菱川師宣記念館/近世日本美術に欠くことができない中核を担い、庶民文化として発展した浮世絵の祖・菱川師宣は千葉県の出身で、その生誕地には菱川師宣記念館があります。もう1つ近世日本美術に欠くことができない中核を担い、武家文化として発展した狩野派の祖・狩野正信も千葉県の出身で、その生誕地に狩野正信生誕地碑があります。千葉県は海に囲まれた半島で風光明媚な景色が多いことから数多くの文化人を輩出していますが、現代でも千葉県を創作の拠点とするアーティストが多いことは頷けます。 | ③岡倉天心邸(五浦海岸)/フェノロサや狩野芳崖らと共に日本画の復興を目指した岡倉天心は新しい日本画の可能性を模索するために茨城県北茨城市に日本芸術院を設立して下山観山、横山大観、菱田春水、木村武山らと共に朦朧体という新しい日本画の技法を生み出し、日本近代美術の父と言われています(過去のブログ記事)。なお、岡倉天心が思索を巡らすために茶室を兼ねて建てた六角堂(観瀾亭)は東日本大震災の大津波で消失していますが、復興支援プロジェクトの一貫として再建されています。 | ④鹿野山九十九谷/鹿野山九十九谷は画家・東山魁夷の出世作「残照」のモチーフとなった場所として知られ、日出又は日没の時間帯にはまるで水墨画のような美しい雲海が見られるスポットとしても人気があります。東山魁夷は、その半生を千葉県市川市で暮らし、その住居跡近くには東山魁夷記念館が建てられています。なお、東山魁夷の代表作「道」のモチーフとなった種差海岸(青森県八戸市)も風光明媚なスポットとして知られ、これらの美しい景観が東山ブルーと言われる色彩を生み出しています。 |
時代をデザインするファッションとその時代を表現する音楽<STOP WAR IN UKRAINE>
▼ヘンデル作曲のオペラ「ジュリオ・チェーザレ(英語名:ジュリアス・シーザ)」(1724年)1711年、オペラ「リナルド」で華々しくロンドン・デビューを果たしたヘンデル(英語名:ハンデル)は、ロンドンでオペラ作曲家として活動しますが、1724年にドイツからイギリスへ帰化し、この年にオペラ「ジュリオ・チェーザレ(英語名:ジュリアス・シーザー)」を初演します。2020年4月に新国立劇場で上演される予定であったオペラ「ジュリオ・チェーザレ(英語名:ジュリアス・シーザー)」はコロナ禍の影響で上演延期されていましたが、満を持して2022年10月に上演することが決定されています。
①女化稲荷神社(茨城県龍ケ崎市馴馬町5387) ②牛久大仏(茨城県牛久市久野町2083) ③蚕影山神社(蠶影神社)(茨城県つくば市神郡1998) ④富岡製紙場(群馬県富岡市富岡1-1) ⑤化粧坂切通し(神奈川県鎌倉市扇ガ谷4-14-7) |
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①女化稲荷神社/女化神社には男に助命された狐が美しい女に化けて妻になり3人の子供を設けますが(お稲荷さんの3匹の子狐)、やがて正体を知られて姿を消したという狐の恩返し伝説があり、奥の院は狐が姿を隠した場所と伝わっています。美しい女に化けたという伝承から江戸の芸者衆が参詣し、化粧が上手くなるコスメの神様として女性の信仰を集めています。 | ②牛久大仏/女化稲荷神社の近くには三千世界を見守る牛久大仏(地上高120m)が安置されていますが、銅像としては日本第1位及び世界第4位の大きさを誇っています。昔から人間は大きいもの、強いもの、美しいものへの変身願望がありますが、それが民間伝承、銅像、アニメーション、映画やファッションなどのメディアを使って表現されています。 | ③蚕影山神社(蠶影神社)/牛久大仏の近くにある筑波山の山麓には、養蚕、製糸及び機織技術が日本に伝来した地として筑波国造が創建した蚕影山神社(蠶影神社)があり、全国の蚕影神社の総本社となっています。インドの金色姫が乗る船が常陸国豊浦へ漂着し、これらを伝承したとする伝説が残されており、ファッションの神様として信仰を集めています。 | ④富岡製紙場/19世紀半、ヨーロッパでは養蚕の疫病が蔓延して絹産業が壊滅的な被害を受けますが、その疫病に対する耐性を持ってた日本の蚕と生糸を輸入してヨーロッパの絹産業は復活し、その後のオートクチュール文化が華開きます。この頃、1872年にフランスの技術を導入し、当時世界最大級の規模の器械製糸工場として 富岡製糸場が設立されます。 | ⑤化粧坂切通し/大河ドラマ「鎌倉殿の十三人」でも紹介されていた鎌倉七切通しの1つで、平氏の武将に死化粧して首実検した場所であることが名前の由来。後年、鎌倉幕府(執権・北条氏)を滅亡させた新田義貞は化粧坂切通しから鎌倉へ攻め入ろうとしますが失敗し、引潮を利用して稲村ケ崎から迂回して鎌倉へ攻め入ったと言われるほどの要衝です。 |
▼オネゲル作曲の交響的断章第1番「パシフィック231」(1923年)鉄道オタクだったオネゲルが蒸気機関車を音楽的に描写したメカニカルな曲です。上述のとおり人間は他の動物を捕食するために広い範囲を移動する必要がありましたが、過去のブログ記事でも触れたとおり、約7万年前の認知革命(脳の突然変異)によって人間は想像力を手に入れ、それに伴う好奇心や気候変動、縄張争い等を契機として大移動を開始します。天気予報と同じですが、人間の脳は生存確率を高めるために「知覚」(現在の情報を収集)+「記憶」(過去の情報を記録)=認知(現在の情報と過去の情報を照合して未来を予測)しますが、移動による新しい知覚や学習による新しい記憶が組み合わさると(シナプス可塑性が活発化)、これまでにない認知が生まれ易くなり(俗に世界が広がる)、それが豊かな創造性を育むようになります。人間の脳は生存確率を高める必要性から、新しい知覚や新しい記憶が不足すると「飽きる」という状態の陥り、旅行に出たり、新曲を聴いたり、お稽古事を始めたり、新しい知覚や新しい記憶を求めるようになります。
▼モンテヴェルディ―作曲の「マドリガーレ集第5巻」(1605年)から第1曲「つれないアマリッリ」14世紀から16世紀のルネサンス期は未だ中世的なキリスト教的な価値観を残してシンメトリーな美(神が体現する完全な調和)を重んじる時代でしたが、やがて科学革命の影響等から、17世紀のバロック期はアシンメトリーな美(自然が体現する多様な変化)を重んじる時代になり、中世(~13世紀)が神を発見した時代であるとすれば、14世紀~17世紀は人間を発見した時代と言えそうです。このような美のパラダイムシフトが生じる17世紀、モンテべルディはマドリガーレ集第5巻第1曲「つれないアマリッリ」の第13楽章において不協和音程である属七の和音(ドミナント・セブン)を使用し、「不協和音程の予備の法則」を破り、突然、その不協和音程を響かせて人々に動揺を与え、理性を搔き乱すという当時の禁じ手を使用することで、これまでにない情感豊かな表現を可能にしました(過去のブログ記事)。その後、20世紀、シェーンベルクが「不協和音程の解決の法則」を破って調性システムの呪縛から音楽を解放します。後述するとおりファッションの歴史も色々なものから人間を解放して自由にして来た歴史と言えます。
▼ベートーヴェン作曲の交響曲第3番「英雄」(1804年)から第2楽章18世紀、ベートーヴェンはフランス革命を主導したナポレオンへのオマージュとして交響曲第3番「ボナパルト」を作曲しナポレオンに献呈する予定でしたが、ナポレオンが皇帝に即位した失意から献呈を取り止めて「エロイカ」と改題したという逸話が残されています。その一方で、ナポレオンは、ナポレオン法典を制定し、法の下の平等(封建制の否定)、所有権の絶対(絶対王政の基盤崩壊)や信仰の自由(宗教権威の基盤崩壊)などを規定し、その後の人の支配から法の支配への流れを作る一方で、この時代を象徴するジェンダーギャップ(男尊女卑)を規定して現代に大きな課題を残しています。これはベートーヴェンの「音楽とは、男の心から炎を打ち出すものでなければならない。そして女の目から涙を引き出すものでなければならない。」という認知バイアスに彩られた言葉にも色濃く影を落としており、現代とは大きく時代感覚が異なっていることを感じさせます。なお、この曲は、当時としては曲の長さ、構成やオーケストレーションなど非常に革新的な曲と言えますが、現代に置き換えて考えると、のだめカンタービレが流行した10年前と比べても時代は大きく変化しており(まだ10年前は伝統や権威に夢を見れた時代でしたが、最近のスタートアップ企業という言葉に象徴されるように時代の価値や興味は伝統や権威を上書きし、新しく時代を塗り替えて行けるものに確実にシフトしてきており)、もはや数百年前に作曲された古典派やロマン派の音楽を有難がって聴く時代感覚にはないという印象を否めません(過去のブログ記事)。この点、年末のイヴェントを含めて、いつまでもベートーヴェン頼みでは辛いものがあります。
▼シェーンベルク作曲のピアノ組曲(1921年)シェーンベルクは、リスト、ワーグナーやドビュッシー等が新しい世界観を表現するための新しい音楽を模索した流れを汲んで試行錯誤を重ねますが、やがて「相互の関係のみに依存する十二の音による作曲法」として十二音技法を完成します。この十二音技法を使って最初に書かれた曲が「ピアノ組曲」(Op.25)になりますが、この曲はバロック舞曲の形式(方法)を借りながら12音技法を使って作曲することでバロック音楽とは全く異なる20世紀の時代性(世界観)を表現する音楽を作ることに成功しています。この曲は100年前の音楽であり、また、十二音技法は映画音楽、ゲーム音楽やポップス音楽等に採り入れられてきたことなどにより既に現代人の耳には斬新な響きには聞こえなくなっていますが、調性システムから音楽を解放して音楽の可能性を広げた功績は非常に大きいと思われます。20世紀がクラシック音楽不毛の時代と言われる状況になってしまった原因は、新しいものを受容できる教養力に恵まれなかった聴衆の質(僕を含む)と、その聴衆の質を高めて来れなかったクラシック音楽界の保守的な体質にあるのではないかという歴史認識が芽生えつつあります。
「革新とは、単なる方法ではなく、新しい世界観を意味する」(ピーター・ドラッカー)
映画「犬王」~観阿弥+犬王(道阿弥)=世阿弥が創始した中世のメタバース・ミュージカル「能楽」~<STOP WAR IN UKRAINE>
①比叡山(京都府京都市左京区修学院牛ケ額) ②日吉大社(滋賀県大津市坂本5-1-1) ③蝉丸神社(滋賀県大津市大谷町23-11) ④観世流発祥の碑(奈良県磯城郡川西町結崎1890−2) ⑤影向の松(春日大社)(奈良県奈良市登大路町) |
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①比叡山/比叡山は八瀬口方面から京、坂本口方面から近江を一望する要衝に位置していますが、近江猿楽は坂本口方面にある日吉大社を中心に活動しました。近江猿楽を率いる犬王(道阿弥)は室町幕府第3代将軍・足利義満の寵愛が篤く、1408年に北朝の後小松天皇が金閣寺に行幸した際の天覧能をつとめていますが、その死後、近江猿楽は衰退しています。 | ②日吉大社/近江猿楽を率いていた日吉座(比叡座)・犬王(道阿弥)は幽玄の趣がある情緒的で洗練された天女舞を得意とし、大和猿楽を率いる観阿弥及び世阿弥と人気を二分していました。世阿弥は「申楽談義」で犬王(道阿弥)を観阿弥に劣らない名人上手と高く評価しており、その歌舞幽玄な天女舞から学び、自らの芸風にも採り入れたと言われています。 | ③蝉丸神社/日吉大社の近くに、琵琶法師・蝉丸が庵を結び小倉百人一首に選ばれた和歌を詠んだ逢坂関がありますが、その場所に平家物語を語る盲僧琵琶の職祖とされる蝉丸を祀った蝉丸神社が建立されています。世阿弥が蝉丸を扱った能「蝉丸」を作っています。史実なのか不明ですが、映画「犬王」では犬王と蝉丸の親交が描かれており、非常に興味深いです。 | ④観世流(結城座)発祥の碑/大和四座は、奈良県奈良市(興福寺)に金春流(円満井座)発祥の碑、奈良県桜井市に宝生流(外山座)発祥の碑、奈良県生駒(龍田神社)に金剛流(板戸座)発祥の碑があります。さらに、京都府京田辺市に観世座の碑、京都府京田辺市(月読神社)に宝生座の碑、京都府京田辺市(酬恩庵一休寺)に薪能金春の碑があります。 | ⑤影向の松(春日大社)/「影向」とは、神仏が仮の姿をとって現れることを意味していますが、能舞台の鏡板に描かれている松は、春日大社の参道脇に立つ老松で、現在は枯死し、後継樹が植えられています。なお、外国人観光客にも人気の奈良公園の鹿は心得があり、カメラを向けていると勝手にフレームインしてくれますが、餌やりは禁止なので要注意です。 |
⑥新熊野神社(京都府京都市東山区今熊野椥ノ森町42) ⑦観阿弥創座の地(三重県名張市上小波田181) ⑧観阿弥供養塔(奈良県大和郡山市城内町2−255) ⑨観世井(観世稲荷)(京都府京都市上京区観世町135−1) ⑩能「楠露」(桜井駅跡)(大阪府三島郡島本町桜井1-3) |
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⑥新熊野神社/1374年、新熊野神社で観世清次(後の観阿弥)が率いる猿楽結崎座が猿楽の能を奉納しましたが、これを観覧していた室町幕府第3代将軍・足利義光は、当時12歳の藤若丸(後の世阿弥)に魅了されたので同朋衆に加えることにし、阿弥号を与えて観阿弥及び世阿弥を名乗らせます。 | ⑦観阿弥創座の地/観阿弥は、1333年に楠木正成の妹と伊賀国阿蘇田を支配した服部元就の間に生まれ、妻の出身地である伊賀国小波田で創座したと言われています。なお、楠木正成は身体機能に優れた芸能集団(忍者を含む)を抱えて興業という名目で全国各地へ派遣して諜報活動を行わせていました。 | ⑧観阿弥供養塔/大和郡山城内に観阿弥の供養塔、大徳寺真珠庵に観阿弥及び世阿弥の墓(非公開)安置されています。なお、観阿弥の出身地である三重県名張市(近畿鉄道名張駅及び名張市役所)には観阿弥像が建立され、また、三重県伊賀市には世阿弥の母像(楠木正成の妹)が建立されています。 | ⑨観世井(観世稲荷社)/観阿弥・世阿弥が室町幕府第三代将軍足利義満から拝領された屋敷跡には井戸(観世井)が残っていますが、この井戸に龍が降りて出来た水の波紋から観世水紋を定紋にしたという逸話が残され(実際は楠木氏の菊水紋の替紋か?)、観世水を象った京銘菓「観世井」が有名です。 | ⑩能「楠露」(桜井駅跡)/観阿弥及び世阿弥は北朝の足利将軍家に配慮して南朝に関する能を一曲も作りませんでしたが、江戸時代になると南朝を扱った太平記物と呼ばれる歌舞伎作品が人気を博します。なお、明治期に作られた楠木正成を扱った能「楠露」は人気が高く上演される機会も多い作品です。 |
" "Tradition" is very often an excuse word for people who don't want to change. " --- Red Barber
▼日本は音の文化(表音文字と詩歌、詩劇)※日本は弥生時代まで無文字文化(口承文化)でしたが、古墳時代に仏教典と共に漢字が伝来します。それまでは文字ではなく音によってコミュニケーションしていた日本人にとって漢字を覚えることは難しかったので、片仮名(例えば、「阿」→「ア」、「伊」→「イ」、「宇」→「ウ」など漢字の片側だけを書くことから片仮名)を発明し、仏教典の漢字を正確に発音するために片仮名と音とを結びつけて漢字の発音(振り仮名、現代の発音記号)を片仮名で仏教典に書き加えるようになります。また、それまで音によってコミュニケーションしていた言葉を文字として表記するために漢字の発音を借用する万葉仮名(当て字)を発明し、その後、漢字を書くのが難しかったので漢字の草書体を崩した平仮名(例えば、「安」→「あ」、「以」→「い」、「宇」→「う」など漢字を平易に書くことから平仮名)を発明したことで文字が浸透し、日本独特の和歌や物語などの文化(目で読むための表意文字の文化ではなく、声(音、言霊、神の音連れ)に出して詠む又は語るための表音文字の文化)が誕生します。当世流のキラキラネーム(意味ではなく音感で命名)は万葉仮名(当て字)にルーツを求めることができますし、ローマ字は片仮名、絵文字は平仮名にルーツを求めることができそうです。
※犬王(道阿弥)は一忠の弟子であったことから田楽の能の影響を受けていると考えられます。
生態学と音楽(植物の音楽✕微生物の音楽✕人間の音楽...)<STOP WAR IN UKRAINE>
①郷土料理たけのこ(千葉県夷隅郡大多喜町黒原181-2) ②狩野元信生誕地の碑(千葉県いすみ市大野937−1) ③サイゼリア発祥の地(千葉県市川市八幡2-6-5) ④白みりん発祥の地(千葉県流山市流山1-261) |
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①郷土料理たけのこ/千葉県大多喜町は全国有数の筍の名産地ですが、全国でも珍しい筍料理の専門店があり、先日、ダウンタウン「ガキの使いやあらへんで」(2022年4月3日放送)でも採り上げられていました。筍づくしの「たけのこ御膳」が人気メニューです。 | ②狩野元信生誕地の碑/郷土料理たけのこの近隣に狩野派始祖・狩野正信の生誕地があります。日本の植物学は遣唐使によって中国から伝来した本草学に始りますが、江戸時代に入ると本草学が盛んになり、本草学者は狩野派の技法を学んで植物の写生画を描くようになります。 | ③サイゼリア発祥の地/千葉県は農業産出額で全国4位の日本の食糧庫ですが、新鮮な野菜に拘りを持ち、自社の農場まである人気のサイゼリアは1973年に千葉県市川市(JR本八幡駅前)に1号店を出店し(現在は閉店)、その後、全国にチェーン展開されています。 | ④白みりん発祥の地/戦国時代には赤みりん(≒ 赤みその特徴)が誕生し、1814年に千葉県流山市で白みりん(≒ 白みその特徴)が誕生します。千葉県野田市のキッコウマン醤油と共に千葉県流山市の万上みりんが庶民に普及し、日本料理に欠かせない調味料になりました。 |
【宇宙が奏でる「宇宙の音楽」】前回のブログ記事で「宇宙の音楽」に触れましたが、NASAが惑星や衛星が発する電磁波等を採集し、それを人間の可聴音域に変換した「宇宙の音楽」を公開しています。ホルストの「惑星」は人類が星座に物語を夢見ていた時代のおセンチな音楽ですが、プレアデス7人娘や彦星、織姫が聞いているであろう「宇宙の音楽」や「量子の音楽」は人間が操ることができるシンプルな音楽とは異なる深淵で精妙な響きに彩られており、人知が及ばない世界の存在を教えてくれています。因みに、クセナスキの「プレアデス」(1979年)や武満徹の「オリオンとプレアデス」(1984年)など現代音楽家がプレアデス(昴)を題材にした音楽を作曲していますが、NASAが採集した「宇宙の音楽」に近い世界観を表現し得ており、これからの人類に必要とされる音楽なのだろうと感じます。
▼ボヴェル「知恵の書」(1509年)から「生態系ピラミッド」※Est(物):鉱物※Est+Vivit(生物):植物※Est+Vivit+Sentit(生物、感覚):動物※Est+Vivit+Sentit+Inteligit(生物、感覚、知性):人間▼現代科学を前提とした生態系を支えるプレーヤーたち※生態系を支えるプレーヤーのうち、地球上の生物の80%以上を占める動かない植物及び人間の体の90%以上を覆う目に見えない微生物・ウィルスは研究の対象とされてきませんでしたが、漸く、これらの研究が進んで色々なことが解明されつつあります(表中の赤字の部分)。※ウィルスは細胞がなく自己複製できないことから非生物とされていますが、生物の細胞に侵入して自らの遺伝子情報に書き換え、その遺伝子情報を書き換えられた細胞が生物の中で複製されることでウィルスが複製されるという方法で増殖します。その意味で、ウィルスは細菌のように生物の体の中で寄生するというよりも、生物の体を乗っ取るというイメージに近いかもしれません。まるでエイリアン映画のようです。
【植物が奏でる「植物の音楽」】植物の葉の表面に電極を取り付けて植物の弾性波(生体電位)の波形を読み取り電子音に変換することで、植物が奏でる音楽「PlantWave」を聴く技術が注目されています。上述のとおり植物には「感覚」や「知性」があり、光、風や人間等に反応して弾性波(生体電位)のピッチやリズムが変化することが分かっています。この技術を使えば、まるでペットと触れ合うように植物と触れ合うことも可能となり、音楽は人類だけではなく全ての生物に共通の言語となり得るかもしれません。因みに、過去のブログ記事でも触れましたが、能楽は仏教の影響を受けて植物の精霊を題材した曲目が多くありますが、西洋音楽では上述のとおりキリスト教の影響から植物を題材にした曲は非常に少ない印象を否めません。この点、武満徹の「樹の曲」(1961年)や藤枝守の「植物文様」(2008年~)など日本の現代音楽家がボタニカルな音楽を作曲しており、音楽表現の可能性を拡げるものとして注目されます。
【微生物が奏でる「微生物の音楽」】微生物を培養しているシャーレに電極を取り付けて微生物が発する生体電位を読み取り電子音に変換することで、微生物が奏でる音楽を聴く技術が注目されています。微生物が奏でる音楽は「ノンヒューマン・リズム」と呼ばれる奇妙なさえずりのような音声パターンが特徴的で、様々な刺激を与えると生体電位が変化することから(例えば、光を当てると生体電位が弱まってリズムが遅くなる、熱を加えると生体電位が強まってリズムが早くなるなど)、様々な微生物に様々な刺激を与えた「微生物の音楽」が公開されています。また、日本人で初めてアルス・エレクトロニカ賞グランプリを受賞して話題になったやくしまるえつこの「わたしは人類」(2016年)や現在最も注目されている日本人の現代音楽家・藤倉大の「GloriousClouds」(2017年)など日本の音楽家も微生物を題材にした音楽を作曲しています。
【人間の神経細胞が奏でる「人間の音楽」】シャーレで人間の皮膚細胞を培養して神経細胞(ニューラルネットワーク)へと成長させ、そこに電極を取り付けてニューロンが発する生体電位を記録すると共に、人間が作った音楽を電子信号に変換してニューロンへ刺激を送り、ニューロンが電子楽器を制御して応答する仕組みを利用して即興演奏することが可能になっており、この技術を脳卒中患者の脳神経の回復やパーキンソン病患者の神経変性疾患の治療等へ応用することが期待されています。また、アルヴィン・ルシェ「独創者のための音楽」(1965年)や「HUMAN GENOME MUSIC PROJECT」(2012年~)など脳波やヒトゲノム配列の人間の生体情報を使って音楽を奏でるバイオ・ミュージック(実験音楽)が注目を集めています。
相対性理論と無調音楽(宇宙の音楽から量子の音楽まで...)<STOP WAR IN UKRAINE>
▼わたしは人類(人類の進歩)▼イノベーション(主に科学技術)と舞台芸術(創造性)の関係
▼ケプラーが惑星の動きを音階にした「惑星の音楽」※左上から順に、土星、木星、火星、地球、金星、水星、月(人間の肉眼で確認できる5つの惑星、地球及び衛星)
▼イノベーションと音楽様式の変遷イメージ
▼芸術(創造性)に影響を及ぼす可能性があるイノベーション(科学技術)
▼古典物理学と現代物理学の世界観※一般人の常識的な感覚に一番近いのはニュートン力学の世界観であり、一般人の知性で何とか理解できるのは相対性理論の世界観(光速のように速い世界を説明するための理論)までだと思いますが、ミクロな世界を含む全ての世界の諸現象を最も矛盾なく説明できるのは量子力学の世界観(粒子のように小さい世界を説明するための理論)だと言われています。しかし、未だダークエネルギーなど相対性理論や量子力学でも説明できないものも存在しています。後述の映画「ファーザー」が描いている認知症患者が生きるパラレルワールド(現実と認識の間に差が生まれ、それらを区別することができずに混同して現実と認識が交錯する2つの世界で生きている状態)は単世界で生じていることですが、量子力学の多世界(アナログツイン)を映像的に表現しているようで大変に興味深いものがあります。この点、量子力学の多世界は相互に干渉(交錯)しないと考えられていますが、認知症患者が住むパラレルワールドは人間の存在実感を脅かす恐ろしさがあります。なお、量子力学の多世界(アナログツイン)の世界観は、日本人が原作を書いた映画「オール・ユー・ニード・イズ・キル」などでも描かれていますが、我々の頭の中にある世界観も徐々に更新されて行くのかもしれません。
Jazz文楽「涅槃に行った猫」✕人形メディア学とオペラ「ホフマン物語」✕人工生命学とキズナアイ<STOP WAR IN UKRAINE>
◆源氏物語第十二帖「須磨」/第二段「上巳の祓と嵐」◆源氏物語五帖「若紫」/第5段「翌日、迎えの人々と共に帰京」(前略)、「いざ、たまへよ。をかしき絵など多く、雛遊びなどする所に」と、心につくべきことをのたまふけはひの、いとなつかしきを、幼き心地にも、いといたう怖ぢず(後略)◆枕草紙第二七段「過ぎにし方恋しきもの」過ぎにし方恋しきもの。枯れたる葵。雛あそびの調度。(後略)
①百太夫神社(兵庫県西宮市社家町1) ②傀儡師故跡の碑(兵庫県西宮市産所町10) ③難波神社(大阪府大阪市中央区博労町4-1-3) ④御霊神社(大阪府大阪市中央区淡路町4-4-3) ⑤植村文楽軒の墓(円成院)(大阪府大阪市天王寺区下寺町2-2-30) |
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①百太夫神社(西宮神社)/西宮神社の境内にあり、傀儡子の始祖である百太夫を祀る百太夫神社。 | ②傀儡師故跡の碑、百太夫の銅像/百太夫神社の旧跡地に傀儡師故跡の碑と百太夫の銅像を建立。 | ③稲荷社文楽座跡之碑(難波神社)/中興の祖・植村文楽軒が難波神社の境内に創座し人形浄瑠璃を再興。 | ④文楽座之碑(御霊神社)/植村文楽軒が御霊神社の境内に文楽座を旗揚げしてから今年で150年。 | ⑤初代植村文楽軒の墓(円成院)/初代植村文楽軒(俗名、正井与兵衛)の墓が円城院に安置。 |
▼人間の本性と人形の問題との関係性
映画「ミュジコフィリア」(現代音楽)とMETA歌舞伎
①クロスオーバーの潮流(ジャンルの越境)大型レコード店等のように音楽ジャンルによって売り場が物理的に区分けされるのではなく、動画配信サービス等のように異なるジャンルの音楽に触れ易い環境になるなど音楽受容の在り方が「所有」から「検索」へと変化し、これまで細分化されていた音楽ジャンルの境界(ハイカルチャーとサブカルチャーの境界を含む。)を超えてジャンルレスに作品の良し悪しで音楽を受容する傾向が顕著になっています(ジャンルからの解放)。これによりジャンルを越境するクロスオーバーの潮流が生まれ、ジャンルの帰属を判断するための音楽の歴史性や様式性等の要素は重要な意義を失い、音楽受容の多様化を背景として、音楽の目的性や性格性等の要素が重要な意義を持ち始めており、それは現代音楽(現代オペラを含む)を含む全てのジャンルの音楽に当て嵌まることではないかと思います。②クロスオーバーの潮流(メディアの越境)音楽がデジタル化したことにより、他のメディアとのコラボレーションが容易になったこと及びアナログ・メディア(コンサートホールやラジオ等)の片方向的な音楽受容からデジタル・メディア(インターネット等)の双方向的な音楽受容が可能となったことで、「音楽」(聴取)➟「音楽+映像」(視聴)➟「音楽+映像+ α」(参加)へと音楽受容のスタイルが多様化します(メディアからの解放)。これによりクラシック音楽に象徴されるような「作曲」-「演奏」-「聴取」が完全に分離されている音楽受容のスタイルばかりではなく、聴衆の自己承認要求を満たすような多様な音楽受容のスタイルを許容するミュージキング(例えば、聴衆が音楽を加工すること、聴衆が音楽を演奏すること、聴衆が音楽を演奏する振りをすることや聴衆が音楽付きの動画を制作することなど)等が増加しています。このような潮流は、音楽だけではなく演劇にも見られ、舞台と客席、フィクションとノンフィクション、役者と観客などの境界を曖昧にしたイマーシブシアターという演劇受容のスタイルが注目されており、芸術体験の在り方が根本的に革新されようとしています。③クロスオーバーの潮流(次元の越境)
ポスト・クラシカルの特徴①聴きやすさ:日常的な空間で聴くための音楽性②エレクトロニカ:電子音を採り入れて拡がりのある音響性③クロスオーバー:他のジャンルとの融合による多様性
新年のご挨拶(その②)
①正福寺(茨城県笠間市笠間1056-1) ②大石邸跡(茨城県笠間市笠間995) ③座頭市の碑(笠間つづじ公演)(茨城県笠間市笠間616-7) ④茨城県陶芸美術館(茨城県笠間市笠間2345) |
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①正福寺/この寺院の歴史は古く651年(白雉2年)の創建となり、坂東三十三ケ所の23番札所の名刹です。 | ①正福寺(アマビエ御朱印)/様々な種類のアマビエの御朱印状のほか、恋愛成就に御利益のあるハート型の絵馬💛 | ②大石邸跡/浅野家は笠間藩から赤穂藩へ国替えになっていますが、大石内蔵助の祖父の屋敷跡が残されています。 | ③座頭市の碑/映画「座頭市」の主人公・座頭の市は実在した人物ですが、茨城県笠間市の出身と言われています。 | ④茨城芸術の森公園(登り窯)/関東ローム層から出土する笠間粘土で作られる笠間焼は栃木の益子焼と共に有名です。 |
⑤柏神社(千葉県柏市柏3-2-2) ⑥三保の松原(静岡県静岡市清水区三保4045) |
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⑤柏神社/江戸時代に千葉県柏市周辺で流行した疫病退散、厄除けを祈願するために柏神社が創建されました。 | ⑤柏神社(アマビエ御朱印)/疫病退散を祈願するために創建された由緒からアマビエ御朱印状が授与されています。 | ⑥三保の松原(表富士)/富士山と共に世界文化遺産に登録され、能「羽衣」の舞台となった三保の松原です。 | ⑥三保の松原(羽衣の松)/地上に舞い降りた天女が羽衣を懸け忘れたとされる羽衣伝説で有名な羽衣の松です。 | ⑥三保の松原(エレーヌの碑)/能「羽衣」の舞に魅せられたバレリーナ、エレーヌ・ジュグラリスの碑です。 |
▼音楽劇の分類と発展
分類 客層 主題 音楽 歌唱法 歌
舞踊国 オペラ 宮廷貴族 神聖
世俗クラシック ベルカント
ドイツ唱法分業 伊 オペレッタ ブルジョア 世俗 仏
独
英ミュージカル プロレタリア ポピュラー クルーナー
(マイク)兼業 米
▼キリスト教宗派と歴史的な芸術嗜好カトリックは「感じる宗教」、プロテスタントは「考える宗教」と言われますが(但し、近年ではプロテスタントもゴスペルに象徴されるように「感じる宗教」に様変わりしていますが)、その仮定に立ってヨーロッパ諸国の人口に占めるカトリック信者及びプロテスタント信者の割合(参考値)を見ると、カトリック信者の割合が多い国は歴史的に歌曲(歌劇)や舞踊(舞踊劇)など感情に働き掛ける芸術を好む傾向が見られる一方で、プロテスタント信者の割合が多い国は歴史的に器楽や演劇など思索に働き掛ける芸術を好む傾向が見られます。
宗派 性格 カトリック 権威主義 聖書の読解は難しいので、神と人間の間にキリスト教会が介在し、キリスト教の教義をミサ(神父の説教や音楽劇等)で伝える。 プロテスタント 個人主義 聖書を自分なりに読解し、神と人間の間にキリスト教会を介在させずに自ら直接に向き合うことで、主体的に信仰する。
国 歴史的な芸術嗜好 キリスト教宗派 伊 音楽 歌曲(歌劇) カトリック:78%
プロテスタント:1%仏 舞踊(舞踊劇) カトリック:48%
プロテスタント:3%独 器楽曲 カトリック:32%
プロテスタント:39%英 文学 演劇 カトリック:14%
プロテスタント:51%
新年のご挨拶(その①)
①金刀比羅宮(虎ノ門)(東京都港区虎ノ門1-2-7) ②虎門跡碑(東京都港区虎ノ門1-1-28) ③鬼鎮神社(埼玉県比企郡嵐山町川島1898) |
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①金刀比羅宮(虎ノ門)/虎ノ門琴平タワーの敷地内にある金刀比羅宮の鳥居には、四神(朱雀・白虎・青龍・玄武)があしらわれています。 | ①白虎(金刀比羅宮)/金刀比羅宮の鳥居にあしらわれている四神のうち、今年の干支でもあり江戸城虎ノ門の名前の由来にもなっている白虎です。 | ②虎門跡碑/江戸城虎ノ門は肥前国佐賀藩主・鍋島勝茂によって築かれましたが、その跡地には虎門跡碑が建立され、虎の像があしらわれています。 | ③鬼鎮神社/関東で唯一、鬼を祀る神社です。鬼門は丑寅の方角(北東)なので、鬼の角は牛(丑)の角、鬼の牙は虎(寅)の牙と言われています。 | ③金棒のお守り(鬼鎮神社)/鬼鎮神社の境内には鬼の金棒が祀られています。また、鬼鎮神社には宮熾仁親王の揮毫による扁額が掲出されています。 |
知識干支方位神から生まれた桃太郎の鬼退治と江戸の刻干支方位神を規律する四思想
用語 意味 四神 中国の神話で天の四方を守護する伝説の神獣である「玄武」(黒)「青龍」(青)「朱雀」(赤)、「白虎」(白)のこと。なお、中央を守護する伝説の霊獣である「麒麟」(黄)を加えて五神と言います。
※四神と四季を組み合わせて、何もないところから、芽が吹き、実が成り、実が熟れるまでを人生の四季に準えた言葉が生まれます。※「青春」という言葉は上記が語源。
方位 四神 四季 人生の四季 北 玄武 冬 玄冬:少年期 東 青龍 春 青春:青年期 南 朱雀 夏 朱夏:壮年期 西 白虎 秋 白秋:壮年期
※北原白秋の「白秋」という雅号は上記が語源。
※幕末の会津戦争で藩士の年齢に応じて4つの部隊に編成されますが、それぞれの年齢層に足りないものを補うために上記の人生の四季とは逆順に命名。陰陽道 宇宙の万物の生成は「陰」と「陽」の組合せであるという考え方。偶数は割り切れること(=別れる、死)から縁起が悪いので「陰」、奇数は割り切れないこと(=別れない、生)から縁起が良いので「陽」となります。
※陰陽道に従って奇数が並ぶ日又は奇数の年齢は縁起の良いとして祝う風習が生まれます。※重陽の節句は「菊の日」とれていますが、江戸時代は男色文化が盛んであったことから、菊が重なるにかけて「男色の日」ともされています。
節目 慶事 五節句 1月7日(人日の節句) 無病息災と五穀豊穣を祈る。 3月3日(上巳の節句) 女児の健康な成長を祈る。 5月5日(端午の節句) 男児の健康な成長を祈る。 7月7日(七夕の節句) 星に願い事を祈る。 9月9日(重陽の節句) 不老長寿を祈る。 七五三 11月15日 子供の長寿と幸福を祈る。 五行説 宇宙の万物の変転は「土」「木」「火」「金」「水」の五要素で行われるという考え方。なお、地球から肉眼で確認できる太陽系の惑星の五星は、この五要素から命名。
※五行説に従って体を養生するために必要な五要素である五つの穀物と五つの果実。※「五穀豊穣」という言葉は上記が語源。
五行 土 木 火 金 水 五穀 粟 麦 黍 稲 豆 五果 棗 李 杏 桃 栗 十二支 地球から肉眼で最も大きく見える太陽系の惑星である「木星」(ジュピター=ギリシャ神話の最高神ゼウス)は、黄道12星座を1年に1つずつ進み、12年の周期で元の星座に戻るので、その周期に従って12進数で年、月、日、時刻や方位を把握する考え方。
※12進数で年、時刻や方位を把握するにあたって自然界の輪廻転生を表す言葉である「子」「丑」「寅」「卯」「辰」「巳」「午」「未」「申」「酉」「戌」「亥」が割り当てられますが(「漢書 律暦志」)、日本ではそれらを分かり易くするために動物の名前に置換。
【譜例1】(バッハ作曲/教会カンタータ第19番(BWV19)/第68小節~)【譜例2】(バッハ作曲/ヨハネ受難曲(BWV245)/第9小節~)
▼2022年がアニバーサリー(節度ある50年刻み)なもの
◆音楽家 シュッツ 没後350年 フランク 生誕200年 ヴォーン=ウィリアムズ 生誕150年 スクリャービン 生誕150年 クセナキス 生誕100年 ◆文学家 ホフマン 没後200年 森鴎外 没後100年 川端康成 没後50年 ◆絵画家 鏑木清方 没後50年 ◆漫画家 水木しげる 生誕100年 ◆文化施設 関蝉丸神社 創建1200年(蝉丸は平安歌人&琵琶奏者) 東京国立博物館 創立150年 ◆その他 沖縄本土復帰 50周年 プッチンプリン(グリコ) 発売50年(ギネス記録:累計販売個数) 資生堂 創業150年 モスバーガー 創業50年
「ムーミン」と「ブリテン」と「歌舞伎」と「SDGs」
①日高寺(茨城県那珂群東海村村松8) ②一乗院(茨城県那珂市飯田1085) ③善國寺(東京都新宿区神楽坂5丁目36) ④芸者小道(東京都新宿区神楽坂3丁目10) |
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①日高寺/虚空菩薩は丑年生まれの人及び寅年生まれの人の守り本尊になっていますが、虚空菩薩を祭っている日高寺の境内に「狛牛」(阿形)及び「狛虎」(吽形)の石像が置かれています。 | ②一乗院/日本一の毘沙門天(13m)が祭られ、毘沙門天の神使「虎」の石像が置かれています。なお、毘沙門天の異名・多聞天に肖り幼名を多聞丸と言った楠木正成の石像も置かれています。 | ③善國寺/寅年生まれの徳川家康が開基し、徳川本家及び分家の一部の祈願所になっていました。善國寺(神楽坂)、正傳寺(芝)及び正法寺(浅草)の毘沙門天は江戸三大毘沙門天と言われています。 | ③狛虎(善國寺)/毘沙門天を祭っている善國寺の境内に毘沙門天の神使「狛虎」(阿形、吽形)の石像が置かれています。この石像は善國寺周辺の江戸庶民が奉納したものと言われています。 | ④芸者小道/善國寺周辺は花街として栄え、その当時の名残が芸者新道(東京都新宿区神楽坂3丁目2−20)や見番横丁(東京都新宿区神楽坂3丁目6-84)等の地名として残されています。 |
①寅さんとさくら(柴又駅)(東京都葛飾区柴又4丁目8) ②とらや(東京都葛飾区柴又7丁目7−5) ③柴又帝釈天(題経寺)(東京都葛飾区柴又7丁目10-3) |
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①寅さんとさくら(柴又駅)/1999年、ファンや地元商店街の募金で柴又駅前広場に寅さんの銅像が建立され、その後、2017年に寅さんを見送るさくら像が建立されています。 | ②とらや/柴又駅から柴又帝釈天に向かう帝釈天参道の途中に映画の第1作から第4作まで実際に撮影で使用されていた団子屋「とらや」(当時、柴又屋)が営業を続けています。 | ②草だんご(とらや)/映画でも度々登場している柴又名物の草団子に添えられた餡子は大人の口に合う上品な甘さです。店内には出演者の色紙や映画ポスター等が掲示されています。 | ②車家の階段(とらや)/実際に映画の撮影で使用された階段がそのまま残されています。映画で登場する架空の団子屋「とらや」のセットを彷彿とさせる間取りになっています。 | ③柴又帝釈天/柴又帝釈天は毘沙門天の親分の帝釈天を祭っており、その子分の毘沙門天の使い走りとして虎(寅)がいるという関係になり、柴又帝釈天を中心に物語が展開します。 |
ジェンダーレス :性別による区別を無くす考え方ジェンダーフリー:性別による差別を無くす考え方
▼LGBT(QIA)とSOGI(ESC)の関係「ジェンダー」とは身体的性と性自認・性表現の関係、「セクシャル」とは身体的性と性的指向の関係を意味します。なお、「セクシャル」を性自認と性的指向の関係として整理する考え方もありますが、人間は観念的な存在ではなく生物的な存在であり、身体的性を無視して性のあり方を考えることは乱暴なので、下表では前者を前提として整理しています。(下表にある主な用語の概念定義はこちらへ。)上表で「全性」と表記している性自認とは、ジェンダーバイナリー(男性又は女性で性別を区分する考え方)を前提とするシスジェンダー(身体的性と性自認が一致している状態)及びトランスジェンダー(身体的性と性自認が正反対で不一致である状態)に対し、ジェンダーレス(男性又は女性で性別を区分しない考え方)を前提として身体的性と性自認が不一致である以下の4パターンを意味しています。・両性:男性及び女性の双方に属すると自認・無性:男性及び女性の双方に属さないと自認・中性:男性及び女性の中間に属すると自認(注2)上表以外の性的指向についてこれまで性のあり方に関する調査で明らかになった分類のうち、上表には含まれていないものの一部を参考までに挙げておきます。・スコリオセクシャル:シスジェンダー以外の者への偏性愛・デミセクシャル:強い絆で結ばれている者への偏性愛②特定の対象又は性質に係る恋愛指向(≠性的指向)を持つ性のあり方・デミロマンティック:強い絆で結ばれている者への偏恋愛・ノンセクシャル:性的感情は抱かず、恋愛感情のみを抱く・リスロマンティック:恋愛感情を抱くが、相手からの恋愛感情を望まない
「この世には3種類のピアニストがいる。ユダヤとゲイと下手くそ。」(ホロヴィッツ)「ゲイの数が一番多いのは音楽関係だよね。二番目が美術家でしょ。」(武満徹)「いい男は、皆、ゲイね。」
- | 系統 | 結縁 | 規律 | 備考 |
伝統的 家族観 |
縦の関係 | 血 | 家父長思想 (忠孝) |
万世一系 の天皇 |
同性愛 家族観 |
横の関係 | 心 | 平等思想 (契約) |
- |
「世界食糧デー」~ SDGs ✕ Soul food ✕ Soul music ✕ Soul dance ~
①高家神社(千葉県南房総市千倉町南朝夷164) ②なめろう(食事処よかった)(千葉県千葉市若葉区北谷津町88−1) ③勝浦タンタンメン(江ざわ)(千葉県勝浦市白井久保296−8) ④くじらの刺身(食堂かねまつ)(千葉県成田市飯仲45) ⑤ホワイト餃子(ホワイト餃子成田店)(千葉県富里市七栄651−189) |
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①高家神社/千葉県南房総市の日本で唯一、料理の神様を祀る高家神社。日本全国から料理人の参詣者が後を絶たず、映画「武士の献立」でも使用されましたが、境内には包丁流派「四条流」が奉納した包丁塚があります。 | ②なめろう/千葉県南房総市で誕生した漁師料理です。「鯵の叩き」は鯵の身と薬味を粗めに叩いて醤油を加えますが、「なめろう」は醤油を入れず、鯵の身に味噌を加えて粘り気が出るまで叩き続け、深い風味が特徴です。 | ③勝浦タンタンメン/江ざわが発祥で、ラー油を使った真っ赤なスープが特徴です。カップラーメンにもなっていますが、ラー油の辛み、玉葱の甘み、出汁(鳥、鰹)の旨みが醸し出す絶妙なハーモニーは癖になる美味しさ! | ④くじらの刺身/千葉県南房総市和田浦では捕鯨が行われており(日本は国際捕鯨委員会から脱退しましたが年間捕獲枠合計460頭の制限あり)、千葉県では鯨料理店が多く、スーパーで鯨の刺身が安価で売られています。 | ⑤ホワイト餃子/神奈川県では萬金餃子で有名ですが、千葉県野田市のホワイト餃子本店が本家本元。なお、野田市に宮内庁御用達の醤油を造るキッコーマン、銚子市に高家神社へ奉納する醤油を造るヒゲタ醤油があります。 |
▼多様性を育む文化の交差①アフリカ大陸の自然信仰(シャーマニズム)の影響アフリカの自然信仰(儀式)では神様又は自然界の霊が人間(霊媒師)に憑依し、それを取り囲んで歌い踊る人々が神様や自然界の霊との交信を試みて陶酔状態になりますが、ゴスペルのコール&レスポンスでも牧師(さながら霊媒師ような存在)の呼び掛けに対して信者達が歌い踊りながら応えること(さながら神様や自然界の霊との交信を試みるようなもの)を繰り返しながら徐々に感興を増して恍惚状態になり、これがハードロックのシャウトへと発展します。
映画「MINAMATA」✕SDGs✕芸術
▼「共感」と「Sympathy」日本語の「共」は、両手で神様へお供え物を捧げることを表す象形文字ですが、同じものを「分かち合う」という語感があります。また、ギリシャ語に由来する英語の接頭辞「Sym(Syn)」は「同じ」という語義を含み、同じものを「分かち合う」という語感があります。【例】Sympathy(共感)=Sym(同じ)+pathy(心)を分かち合うSymphony(交響曲)=Sym(同じ)+phony(音)を分かち合うSynergy(相乗効果)=Syn(同じ)+energy(力)を分かち合う
◉未だ数少ない音楽業界で公表されているSDGsの取組事例
【ゴール3】すべての人に健康と福祉を
▶音楽が社会にできることの一つとして、コンサートへ足を運ぶことができない方へ病院や商業施設、銀行、空港、駅等で演奏会を開催(アルゲリッチ芸術振興財団)
▶「BGMのテンポがお店での購買行動に及ぼす影響」「居心地の良いBGMの音量」など音が人に与える影響に関する様々な研究を行い、「免疫力を高める音楽」「仮眠のための音楽」「禁煙を支援する音楽」「女性のPMSを緩和させる音楽」「血行を良くする音楽」「シニアのためのヒーリング音楽」など人々の健やかな暮らしを支える音楽を提供(USEN)
▶0歳児でも入場できるコンサートの開催や託児サービスを設けて育児中でもコンサートへ来場しやすい環境を整備(名古屋フィルハーモニー交響楽団)
▶ヘッドホン・イヤホン商品の70%以上で、耳の健康に留意した機能を搭載(ヤマハ)
▶次世代のライブビューイングシステムを開発(ヤマハ)
【ゴール4】質の高い教育をみんなに
▶学校等訪問コンサート、子供のための無料コンサートなど県内外でピノキオコンサートを開催(アルゲリッチ芸術振興財団)
▶ハイクオリティなコンテンツを子供に提供し、子供の成長を支援(USEN)
▶小中学校で行う「移動音楽教室」や、各区の小劇場等で行う「なごや子どものための巡回劇場」などを開催(名古屋フィルハーモニー交響楽団)
▶新興国のローカル音楽演奏に必要な機能を備えた電子楽器の拡充(ヤマハ)
▶スクールプロジェクト 7カ国100万人に器楽学習の機会を提供(ヤマハ)
【ゴール5】ジェンダー平等を実現しよう
▶音楽界は他の分野に比べてジェンダーの平等を実現(アルゲリッチ芸術振興財団)
【ゴール10】人や国の不平等をなくそう
▶人種や宗教等を超えて「音楽」という世界の共通言語を通して交流(アルゲリッチ芸術振興財団)
▶障がいの内容や種別に応じた鑑賞環境の整備、来場者への対応などに配慮した、福祉コンサートを各地で開催(名古屋フィルハーモニー交響楽団)
▶世界各国・地域に最適な吹奏楽・オーケストラ普及支援(ヤマハ)
【ゴール11】住み続けられるまちづくりを
▶音楽祭を通して教育、国際交流、産業連携、観光等の地域活性化、地方創生に貢献(アルゲリッチ芸術振興財団)
▶音楽の街づくりプロジェクト(おとまち)(ヤマハ)
【ゴール16】平和と公正をすべての人に
▶「平和」「国際的な交流」「未来」「寛容と連携」「芸術は孤高のものではなく、人と共にあることが大事だ」という信条を持ち、ピノキオコンサートのおはなしの中でもこのことに触れるなど「人の育成」に注力(アルゲリッチ芸術振興財団)
映画「HOKUSAI」とモンテベルディとシェーンベルク
2024年に刷新される新千円札の裏面には葛飾北斎の富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」が使用されますが(因みに、新一万円札の表面:渋沢栄一、裏面:東京駅(丸の内駅舎)、新五千円札の表面:津田梅子、裏面:藤、新千円券の表面:北里柴三郎、裏面:富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」)、それに肖ってのことか映画「HOKUSAI」が公開されたので観に行くことにしました。ドビュッシーの交響詩「海」初版譜表紙はドビュッシーの希望によって葛飾北斎の富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」(1823年制作開始、1831年発行)で飾られており、ドビュッシーの書斎に富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」が飾られている写真が残されていることなどから、ドビュッシーが富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」からインスピレーションを受けて交響詩「海」を作曲した可能性について指摘されていることは有名な話ですが、葛飾北斎が房総を訪れた際に、波の伊八こと、武志伊八郎信由の欄間彫刻「波と宝珠」(1809年完成)からインスピレーションを受けて富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」を創作した可能性(Good artists copy, great artists steal. Pablo Picasso)について指摘されていることは意外と知られていません。この点、富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」は本牧沖から見た構図ではないかと言われていますが、その源泉を辿れば、波の伊八が欄間彫刻「波と宝珠」を創作するためにスケッチし、東京オリンピックのサーフィン会場になっている大東崎(日本のサーフィン発祥の地である釣ケ崎海岸)の波が富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」の生み(海)の親ということになります。もし東京オリンピックが開催されることになれば(その是非は別論として)、世界中のサーファーが「伊八(北斎)の波」に乗りにくることになります。但し、カエルの小便のような小波しかない日もありますので、どうなることやら心配になりますが....。
①御宿海岸(千葉県夷隅郡御宿町六軒町505−1) ②源頼朝上陸地の碑(千葉県安房郡鋸南町竜島165−1) ③九十九里浜(千葉県山武郡九十九里町真亀) ④神明神社(千葉県鴨川市東江見332) ⑤菱川師宣記念館(千葉県安房郡鋸南町吉浜516) ⑥大東岬(釣ケ崎海岸)(千葉県長生郡一宮町東浪見) ⑦行元寺(千葉県いすみ市荻原2136 ) ⑧金谷港(千葉県富津市金谷4303) |
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①相棒のハーレーと御宿海岸/風に誘われ、房総半島をツーリング。 | ②源頼朝上陸地と富士/源頼朝は石橋山合戦に敗れて房総半島に遁れ、味方を募って再起し、3ケ月後に富士川合戦で平家に大勝。房総は敗者復活の地。 | ③九十九里浜とサーファー/源頼朝が1里毎に矢を立てさせて海岸線の長さを図ったところ、99本の矢が必要だったことから九十九里浜と命名。 | ④浅野家屋敷跡(神明神社)/大石内蔵助の切腹6年後、浅野内匠頭長矩の弟・浅野大学長広は幕府から安房国朝夷郡・平郡500石を与えられ御家再興 | ⑤菱川師宣「見返り美人」像/浮世絵の創始者・菱川師宣は千葉県鋸南町保田が出身地。狩野派の祖・狩野正信は千葉県いすみ市大野が出身地。 |
⑥大東岬(釣ケ崎海岸)/波の伊八が波をスケッチした場所。日本のサーフィン発祥の地としても知られ、東京オリンピックのサーフィン会場。 | ⑦行元寺(欄間彫刻「波と宝珠」)/大東岬(釣ケ崎海岸)から西へ約10kmの行元寺で、1809年に波の伊八が欄間彫刻「波と宝珠」を完成。 | ⑦行元寺(パクリンピック)/葛飾北斎は欄間彫刻「波と宝珠」にインスピレーションを受けて、1831年に富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」を発行。 | ⑧房総半島と富士/富士山の見え方から、葛飾北斎は本牧沖から見える富士ではなく房総半島から見える富士を心象風景にして描いた可能性が指摘。 | ⓪ドビュッシーの書斎と神奈川沖浪裏/ドビュッシーとストラヴィンスキーが映る背後の壁には葛飾北斎の富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」が掲示。 |
ネタバレしない範囲で簡単に映画「HOKUSAI」の感想を残したいと思います。この映画を観るにあたり、中学及び高校で習った化政文化時代の概要をお浚いしておくことが有益です。葛飾北斎が活躍した化政文化時代(18世紀後半から19世紀前半)は浮世絵、滑稽本、川柳、歌舞伎など「洒落」や「通」を好む町人文化(同じ町人文化でも、元禄文化はブルジョアジー層の文化、化政文化はプロレタリアート層の文化)が華開き、これにより庶民教育が活発になって庶民の間にも政治や社会を風刺する批判的精神が高揚するなか、幕末(近世末期)から明治(近代初期)にかけて活躍する人材が育まれ、2024年に刷新する新紙幣に採用される渋沢栄一、津田梅子や北里柴三郎など日本の近代化を推進する人材を輩出する伏線となりました。この時代は文化(時代)の爛熟期にあたり、庶民は、喜多川歌麿の美人画や東洲斎写楽の役者絵など「退廃的、刹那的、享楽的な趣味」の作品に魅了されると共に、十返舎一九の滑稽本「東海道中膝栗毛」、葛飾北斎の名所絵「富嶽三十六景」、歌川広重の名所絵「東海道五拾三次」などの影響による旅行ブーム、念仏修験行者・播隆による槍ヶ岳初登頂など「未知の世界」への挑戦に胸を熱くし、鶴屋南北の歌舞伎「東海道四谷怪談」、滝沢馬琴の読本「南総里見八犬伝」などに見えられる「異質な世界」への好奇心に心を躍らせていた時代です。
柳楽優弥さんが演じる葛飾北斎(青年期)は、当初、「目に見えるもの」を描くことのみに執着しますが、遊女の内面や艶を巧みに捉えて独創的に表現する喜多川歌麿の美人画や、役者の個性や独特な身体表現を巧みに捉えて独創的に表現する東洲斎写楽の役者絵などに触れ、それらの才能に対抗心や嫉妬心を抱きながらも「目に見えるもの」のみを描くのではなく「心に見えるもの」を描くことで対象(画題)の本質に迫ることを学び、その才能を開花させながら自らの独創的な表現を確立して行く人間味溢れる姿として描かれています。この点、西洋画は「影」を描くのに対し、日本画は「影」を描かないことが特徴的な違いとして挙げられますが、西洋画は写実性を重視し陰影法や線遠近法を利用して絵を描くことを伝統(西洋文化は父なる神による父性原理を基調とし、父と子が肉体的に一体ではなく主客の別があるように全てのものを「区別」する世界観から、対象を外から客観的に捉える視点)とする一方で、日本画は心象風景を重視し平面的な構成のなかでデフォルメした造形や色彩を利用して絵を描くことを伝統(日本文化は女神による母性原理を基調とし、母と子が肉体的に一体であり主客の別がないように全てのものを「包含」する世界観から、対象を内から主観的に捉える視点)としており、このような日本画の特徴からインスピレーションを受けたマネ、モロー、ピカソ、セザンヌやゴーギャンなどは西洋画の伝統である「写実の呪縛」から解放され、新たな創作の視点(I paint objects as I think them, not as I see them. Pablo Picasso)を見い出します。
田中泯さんが演じる葛飾北斎(老年期)は、絵師として円熟の境地に達し、その研ぎ澄まされた感性や突き詰められた表現の凄みが滲み出てくるような風格が感じられます。この映画の中で、喜多川歌麿や東洲斎写楽などを育んだ江戸の名プロヂューサー・蔦屋重三郎が「絵は世の中を変えられる」と葛飾北斎(青年期)を導き、絵師として円熟の境地に達した葛飾北斎(老年期)が猶も「勝負してぇんだ、世の中とよ」と心境を吐露するシーンが印象的に描かれていますが、葛飾北斎は時代の価値感に挑戦し、その価値感を刷新する新しい表現を貪欲に模索し続けるなかで生み出された作品が上述のとおり日本ばかりか西洋にまで多大な影響を与え、アメリカの雑誌「LIFE」が1998年に発表した「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」に日本人で唯一選ばれる偉業を成し遂げています。このような時代の価値感を刷新する新しい表現は、その表現が持つ珍しさ(世阿弥の言葉を借りれば「花」)を面白く感じる庶民に熱烈に歓迎される一方で、その時代の価値感を頑なに守ろうとする権力者から疎まれ、それらの斬新な表現は厳しく弾圧されます。この時代の価値感のせめぎ合いは、時代を超えて洋の東西を問わず繰り返されています(江戸幕府の取り締まりと同様の例は、例えば、教会権威に始まり、ヒトラーやスターリン等の独裁政権に至るまで西洋でも枚挙に暇がありません。)。葛飾北斎などが挿絵を描いた読本の人気作家・柳亭種彦(別名・高屋彦四郎という小普請組に属する食録200俵の旗本)は江戸幕府の取り締まりに対して自らの表現意欲に忠実であろうと葛藤しますが、終には天保の改革で譴責されて死亡します(その死因はショックによる病死説が有力ですが、この映画では自殺(惨殺)説が採られています)。葛飾北斎は自らの身にも危険が及ぶ虞があるなかでも筆を折ることはなく命を懸けて絵に向かい続けますが、その田中泯さんが演じる葛飾北斎(老年期)の孤高な姿には絵師の矜持が感じられ、まるで葛飾北斎の魂が息衝いているような迫力があります。この映画の中で、絵師の筆使いがアップで映されるシーンがありますが、役者の目元に繊細な表情を生む東洲斎写楽の精緻な筆使いが出色ですし、波足を描く大胆かつ滑らかな筆致や波の飛沫を描く点描法など葛飾北斎の創作過程を彷彿とさせるものがあり興味深いです。また、普段は目にすることがない彫師や摺師が作品を仕上げるシーンも描かれていますが、絵師だけではなく彫師や摺師の技量が作品の出来栄えを大きく左右することがよく分かります。なお、富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」の大波を鮮やかに立ち上がらせるベロ藍は、ベルリンで開発された輸入顔料ですが(江戸っ子のべらんめえ調で「ベルリン藍」が「ベロ藍」に訛ったもの)、富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」の大波の鮮烈な印象から海外では「Japan Blue」とも呼ばれています。新一万円札の表面に採用される渋沢栄一は藍玉を作る農家の出身ですが、富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」を色彩の面からどのように見ていたのか興味があるところです。因みに、藍は、昔から染料だけではなく薬草として解毒、解熱や消炎等にも利⽤され、ポリフェノール(抗酸化作用)やトリプタンスリン(抗菌作用)を含んでいることから体に良いと言われており、その鮮やかな発色も手伝ってお茶や料理に重用されています。
なお、上述のアメリカの雑誌「LIFE」が1998年に発表した「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」(但し、「欧米人から見た」という断り書きが必要と思われる人選)には、86位に葛飾北斎が選ばれているほか、画家では5位にダヴィンチ、59位に范寛、78位にピカソ、84位にラファエロ、彫刻家では36位にミケランジェロ、音楽家では33位にベートーヴェン、62位にグイド、89位にモンテベルディが選ばれています。この点、並み居る音楽家の中でも、その革新的な業績がなければ、その後のクラシック音楽の発展もなかったと思われる決定的な影響を残したグイド(記譜法の発明や階名唱法の考案)とモンテベルディ(不協和の解放及びオペラの確立)が注目されますので、その業績を讃えるべく、以下で簡単に触れてみたいと思います。
いまさら説明の必要はないと思いましたが、グイド・ダレッツォは、11世紀前半のイタリアで活躍した音楽教師(修道士)で、4線譜に四角い音符を書く記譜法を発明しました。それまでの音楽は口伝承されていたことから、聖歌を正確に後世に伝えることが難しく、また、殆どの音楽は即興演奏されて再演されることはありませんでした。しかし、音楽を楽譜(紙)に記譜できるようになったことで、聖歌を正確に後世に伝えることが可能になり、また、他人に正しく音楽を演奏して貰うことが容易になったことで「作曲家」が誕生し、後世の偉大な作曲家達を生む伏線となりました。なお、グイドの名前は電子楽譜の商品名にもなっていますが、最近では音を検知して演奏の進行に併せて自動で譜めくりしてくれるアプリなども登場し、コンサートホールの風物詩である目にも止まらぬ譜めくりの神(紙)業は廃れてしまうことになるかもしれません。
革新 | 社会 | 影響 |
記譜法の発明 | 中世 近代 |
①音楽(作曲)の記録➡作曲家の誕生 ②近代社会の到来➡作曲家、演奏家、観客の分離 |
録音技術の発明 | 現代 | ①音楽(演奏)の記録➡音楽受容の変化 ②現代社会の到来➡音楽需要の多様化 |
AI(人工知能) ロボット工学 |
未来 | ①音楽(作曲・演奏)の脱人間化➡可能性拡大 ②未来社会の到来➡職業音楽家の解放 |
*2 音楽受容の変化:聴衆の関心が作曲から演奏へ移り、新曲より既存曲の音楽解釈や演奏技量の差異に注目
*3 現代社会の到来:マスメディア、コンピュータやITなどの普及
*4 音楽需要の多様化:BGM、映画・ゲーム・電子音楽やクロスカルチャーなどメディアやシーンが多岐
さらに、グイドは、ヘクサコルド(6音音階)の階名による歌唱法(ソルミゼーション)を考案します。この点、グイドは、「聖ヨハネ賛歌(聖ヨハネの夕べの祈り)」を聖歌隊に教えるにあたって4線譜上の音符(≒ ピアノの白鍵の第1音から第6音)にそれぞれ名前を付けて(即ち、聖ヨハネ賛歌の各小節の最初の音が1小節進む毎に1音づつ上行するように作曲されていることに着目し、各小節の最初の音の音高とそれぞれに対応する小節の最初の歌詞(シラブル)とを結び付けて)音程を取り易くする歌唱法(ソルミゼーション)を考案して効果的な音楽教育を実現しますが、その後、ソルミゼーションはソルフェージュ(読譜に限らず聴音等を含む幅広い音楽教育)へと発展します。これらのグイドの発明によってクラシック音楽は世界的に普及しました。
原文 | 訳文 | 備考 |
Ut queant laxis Resonare fibris Mira gestorum Famuli tuorum Solve pollute Labii reatum Sancte johannes |
あなたの僕が 声をあげて あなたの行いの奇跡を 響かせることができるように 私たちの穢れた唇から 罪を拭い去って下さい 聖ヨハネ様 |
Ut➟Dominus(主) Sj➟Si |
伊語 : | Ut (Do) |
Re | Mi | Fa | Sol | Ra | Sj (Si) |
Ut (Do) |
Hexa chordum |
日本語: | ド | レ | ミ | ファ | ソ | ラ | シ | ド | 階名 |
ハ | ニ | ホ | ヘ | ト | イ | ロ | ハ | 調名 | |
独語 : | C | D | E | F | G | A | H | C | Classic |
米語 : | C | D | E | F | G | A | B | C | Jazz |
*5 16世紀頃に「Ut」(ウト)が発音し難いことから主イエス・キリストを意味する「Dominus」の「Do」(ド)に置き換わります。また、17世紀頃に7番目の音(ピアノの白鍵の第7音)として追加された聖ヨハネを意味する「Sancte johannes」の「Sj」が発音し難いことから「j」を「i」に置き換えて「Si」(シ)が追加されます。
クラウディオ・モンテベルディは、17世紀前半にイタリアで活躍した音楽家で、不協和の解放による新様式の音楽や劇的な音楽表現によるオペラの確立などによってルネッサンスからバロックへの橋渡しとなる重要な役割を果たしました。この時代の音楽は、キリスト教の教義(歌詞)を伝えることを主な目的とし、音楽はそれを伝えるための補助的な役割を担っているに過ぎないと考えられ、キリスト教の教義(歌詞)を明瞭に発音することが重視されました。また、15世紀頃から発達した複数声部を持つポリフォニー音楽により旋律が複雑になると、音楽によってキリスト教の教義(歌詞)が明瞭に聞き取れなくなることがないように教会から注意が促されました。これに対して、モンテベルディは、キリスト教の教義を伝えることよりも、人間の情感(Affect) を表現することを重視し、より豊かな情感表現を可能とするために、当時、社会的に許容されていなかった不協和の解放に踏み出しました。因みに、モンテベルディが不協和の自由な使用に先鞭をつけたことで、その後に登場する古典派音楽では約5割、ロマン派音楽では約7~8割、現代音楽では9割以上が不協和音程で成り立っていると言われています。
モンテべルディは、マドリガーレ集第5巻第1曲「つれないアマリッリ」の第13楽章において、不協和音程である属七の和音(ドミナント・セブン)を使用していますが、不協和音程の予備の法則を無視して、その直前に不協和音程「ファ」と同じ音を緩衝材として用意するのではなく「ラ」という全く関係ない音を使用するという当時の禁じ手を敢えて犯すことで、これまでにない情感豊かな表現を可能にしました(但し、遥かに複雑な音楽に慣れ親しんでいる現代人の耳には、それ程、情感豊かな表現に聴こえないことは仕方がありません。)。この背景には、それまでのキリスト教的な価値観において、神は完全な存在であり、仮にその完全なものから不完全なものが生じたとしても、その不完全なものは直ぐに完全なものに置き換えられて神の秩序は保たれる(全ては神の手中にある)という思想のもと、不完全性を体現する不協和音は完全性を体現する協和音から生じ(不協和音程の予備)、速やかに、完全性を体現する協和音へと解消される(不協和音程の解決)べきであるという音楽理論が確立します。よって、不協和音程を使用するときは、突然、その不協和音程を響かせて人々に動揺を与え、理性を搔き乱さないように配慮することが求められ、その直前の協和音の中にその不協和音程と同じ音を前もって響かせることで衝撃を和らげて人々の動揺を抑えるべきであるという考え方(不協和音程の予備)が長年の伝統として根強く信奉されていました。しかし、ルネッサンス時代に入るとギリシャ神話的な価値観が見直され、キリスト教的な価値観である神聖性(理性)からギリシャ神話的な価値観である人間性(本能)への回復が志向されるなかで、モンテベルディはキリスト教的な価値観に挑戦し、「不協和音程の予備」の法則を打ち破ることでギリシャ神話的な価値観へ刷新する新しい音楽表現を獲得しました。因みに、協和音程(ド・ミ・ソなど)とは、2音間の振動比が単純な音程を言い、完全に調和された澄んだ響きがして安定感があります(理性的:弛緩)。一方、不協和音程(ソ・シ・レ・ファなど)とは、2音間の振動比が複雑な音程を言い、不完全な調和による濁った響きがして不安定感があります(本能的:緊張)。その不協和音程の中でも属七の和音(ドミナント・セブン)は、7度の音(ファ)と1度の音(ソ)が2度の間隔しかなく、その響きのぶつかり合いが耳を不快に刺激し、その濁った響きを協和音程(主音、トニック)の澄んだ響きへ解消したいという心理が強く作用するので、音楽が調和するうえで最も重要な働きをする和音とされています。後世になると、モンテベルディによって不協和音程という音楽の禁断の果実に目覚めた人類は、より豊かな情感表現を求めて属七の和音以外の不協和音程についても「不協和音程の予備」の法則を次々に打ち破るようになります。やがて音楽の禁断の果実を食べ飽きてしまった人類は、その品種改良に着手しますが、その改良された果実は一癖も二癖もあるもので人によって極端に好き嫌いが分かれているというのが現在です。なお、以下の譜例について若干補足すると、属七の和音(ソ・シ・レ・ファ)は、上述のとおり7度の音(ファ)と1度の音(ソ)がぶつかり合う不協和音程であることから、7度の音(ファ)は協和音程の3度の音(ミ)に解消し、また、1度の音(ソ=根音)は五度下行して協和音程の1度の音(ド)に解消することで、不協和音程の解決が図られて安定感(終止感)を生んでいます。さらに、属七の和音(ソ・シ・レ・ファ)は、7度の音(ファ)と3度の音(シ)が三全音(キリスト教では理性を搔き乱す不安定な音程として「悪魔の音程」と呼ばれ、メロディーラインへの使用が禁じられていました。)の関係にあり不協和音程であることから、3度の音(シ=導音)は半音上行して協和音程の1度の音(ド=主音)に解消することで、不協和音程の解決が図られて安定感(終止感)を生んでいます。
なお、その後のクラシック音楽の発展や現代音楽の展開を考えると、1オクターブ12音を主音とする24の長短調で構成される平均律クラヴィーア曲集(但し、バッハは平均律ではなく不均等律として作曲したとする説もありますが、バッハの意図はどうあれ、後世に与えた影響は変わりません。)を作曲したバッハ(これにより転調が容易となるなど音楽表現が飛躍的に豊かになりました。)やピアノを発明したクリストフォリ(これにより音の強弱表現が可能となるなど音楽表現が飛躍的に豊かになりました。)などが選ばれていないことは意外です。因みに、1オクターブを等比数列で12分割する十二平均律を世界で最初に発明したのは16世紀末の中国の音楽学者・朱載堉と言われています。
調性音楽は、主音(協和音、トニック)に始まり、そこから生じた不協和(ドミナント、サブドミナント)は主音(協和音、トニック)に解消されて終わる(不協和音程の解決)という予定調和の構造を持っていますが、リストは旋法、ドビュッシーは全音音階、ワーグナーは半音音階などを多用することにより不協和(ドミナント、サブドミナント)を連ねて主音(協和音、トニック)に解消しないこと(不協和音程の解決の法則を無視)で、その曲の主音を曖昧にして「調性の呪縛」から音楽を解放しようと試みます。その流れはシェーンベルクに引き継がれ、やがて主音を生まないために12音を均等に使って基本音列(セリー)を作り、その基本音列(セリー)を様々に変化させて作曲する十二音技法を発明します。モンテベルディは属七の和音を不協和音程の予備から解放し、不協和音程の解決(主音の終止感)を自由に設定できるようにしましたが、シェーンベルクらは主音の設定や長短の音階を完全に無くして不協和音程の解決(主音の終止感)をも不要として、不協和音を自由に使用することができるようにしました。これによってそれまで調性音楽の分析に使われてきたシェンカー理論(楽典、和声論、対位法等の従来の音楽理論を総合して楽曲を俯瞰し、その楽曲を構成する基本的な動線、骨格や構造を浮かび上がらせることで、その作曲意図を詳らかにする方法論)では無調音楽の分析を行うことはできなくなったので、それに代わる音楽分析の手法としてピッチクラス・セット理論(楽典、和声論、対位法等の従来の音楽理論を使えないことから、12音を等価として扱うことを前提として同じ音名の音を同じ数字で表記し(ピッチクラス)、その数字で表記される音の組み合わせパターン(セット)を使って楽曲を俯瞰し、その楽曲を構成する基本的な動線、骨格や構造を浮かび上がらせることで、その作曲意図を詳らかにする方法論....例えば、ドを「0」とし、そこからピアノの鍵盤に従って12音に順番に数字を割り振ると、シ♭・ラ・ド・シの音列(=BACHの主題は重複する音名なし)は「10(A)・9・0・11(B)」と表記され、このピッチクラス・セットを1つの手掛りとしてその楽曲を構成する基本的な動線、骨格や構造等を分析)が登場します。詳しくは以下の著書をご参照下さい。なお、シェーンベルクは、表現主義の画家としても知られ、その弟子のアルバン・ベクルをモデルにした肖像画(「作曲家アルバン・ベルクの肖像」1910年作)を描いています。その作風は写実性よりも特徴的なフォルムや色彩を利用して対象の内面を描き出そうとするもので、葛飾北斎、喜多川歌麿、東洲斎写楽など日本の絵師が写実性ではなく心象風景を重視し平面的な構成のなかでデフォルメした造形や色彩を利用して絵を描く伝統(外観を描く印象主義だけではなく内面を描く表現主義にも近い測面)と相通じるものが感じられますので、アルバンベルクの創作活動に何らかの影響を与えていた可能性もあり興味深いです。
時代の価値観への挑戦 | 時代の価値観を刷新 | 代表的な芸術家 |
写実の呪縛からの解放 =写実性を重視しない 浮世絵の影響 |
印象主義 (外観を描く) |
マネなど ※ドビュッシーなど |
象徴主義 (内面を具体的に描く) |
モローなど ※ワーグナーなど |
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表現主義 (内面を抽象的に描く) |
ムンクなど ※シェーンベルクなど |
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調性の呪縛からの解放 =不協和を自由に使用 |
不協和音程の予備を不要 (調性音楽) |
モンテベルディなど |
不協和音程の解決を不要 (無調音楽) |
シェーンベルクなど |
現代は、あらゆるものから解放されて却って手掛りを見失い手詰り感がある状態ですが、人工知能(AI)やロボット工学によるイノベーションによって、その人間の限界を超える試みが始められています。単に、人間が作曲し又は演奏した音楽の構造やパターン等を学習し、それらの素材を数学的に処理して別の音楽を作曲し又は演奏する人工知能(AI)やロボットを開発するだけではその意義は乏しく、人間とは異なる発想から全く新しい音楽を創造し又は全く新しい表現で演奏する人工知能(AI)やロボットを開発するのでなければ、その恩恵は極めて限定的なものになってしまいます。近い将来、芸術の分野でも人間の限界を超えるような創造性を発揮し、人類に新しい地平を切り開くような芸術体験をもたらしてくれる人工知能(AI)やロボットの開発を期待したいです。尤も、光が強ければ影を濃くするのが道理なので、その点への慎重な検討、配慮も欠かせませんが…。
◆おまけ
ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」でお馴染みの「ドレミの歌」はグイドが聖歌隊に「聖ヨハネ賛歌」を指導するために考案した階名唱法(ソルミゼーション)が原形になっています。なお、日本では、主イエス・キリストが3時のおやつに化けて、最初のドはDonut(ドーナツ)の「Do」になっていますが、これは日本でドレミの歌を広めたペギー葉山さんが食べたかった3時のおやつから採られているそうです。因みに、文明堂のCMでもお馴染みの3時のおやつは「御八つ」と書き、江戸時代の八つ時(PM3時頃)を意味する言葉が由来になっていますが、1日の中でPM3時頃が脂肪細胞に脂肪を溜め込む働きをするタンパク質の量が最も少なくなる時間帯だそうで、この時間帯の間食は太り難いそうです。心の不協和が解決し難い時代に、その不協和を少しでも解決するために、3時のおやつで少し贅沢な時間を過ごてみるのも良いかもしれません。
オペラは16世紀末にフィレンツェで発明された音楽劇ですが、ペーリ、カッチーニやモンデヴェルディなどの作曲家が相次いでオペラを作曲しています。このなかでもモンデヴェルディが作曲した歌劇「オルフェオ」は、アリアやレチタティーヴォ等の後世のオペラで使用される音楽形式が見られると共に、ライトモチーフや劇的な音楽表現等を採り入れた最初の本格的なオペラで、モンテヴェルディによってオペラが確立されたと言っても過言ではありません。
シェーンベルクが1921年に初めて全曲を十二音技法で作曲した「ピアノのための組曲」(Op.25 )をグールドによる緊張感の張り詰めた閃き溢れる演奏でお聴き下さい。
人工知能「Emmy」(AIソフト)が作曲したバッハ風フーガをお聴き下さい。「人間は見聞きして判断しているのではなく、判断してから見聞きしているのである」という言葉のとおり人工知能(AI)が作曲した曲であるというバイアスがその音楽を心理的に遠ざけてしまっているのかもしれませんが、非常によく出来ている音楽ではあるものの、あくまでも「バッハ風」(人間の延長)であってバッハ(人間の限界)を超えるような音楽とは思われず、人類に新しい地平を切り開くような芸術体験をもたらしてくれるレベルには未だ程遠いという印象を拭えません。
新年の挨拶(2021年~その②)
①布多天神社(東京都調布市調布ケ丘1丁目8−1) ②下石原八幡神社(東京都調布市富士見町2丁目1−11) ③江北氷川神社(東京都足立区江北2丁目43−8) |
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①布多天神社/調布市名誉市民で漫画家の水木しげるさんの命日である11月30日を「ゲゲゲ忌」として特別に鬼太郎御朱印状が授与されています。なお、来年は水木しげるさんの生誕100周年ですが、これを記念して映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」が制作、公開される予定になっています。 | ①布多天神社/御祭神は菅原道真公ですが、その神使である臥牛(撫で牛)が境内に祀られています。 | ①布多天神社/アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」では、神社の裏手にある鎮守の森に鬼太郎が棲んでいる設定になっています。近くの調布市深大寺では、毎年、鬼(妖怪)が人間に豆をまく「鬼太郎豆まき」が行われていますが、人間中心主義ではなく自然尊重主義の立場からすると人間こそ豆をまかれるべきだという帰結になっても不思議ではなく「慎み」の気持ちを呼び覚ましてくれます。 | ①布多天神社/アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」(オープニングに布多天神社が登場)は、当初、アニメ「墓場鬼太郎」というタイトルでしたが、そのタイトルとなった墓地のモデルになったのが布多天神社の裏手にある大正寺の墓地です。後方に見える建物は桐朋音大調布キャンパスで、その近所にあるベーカリー&カフェ「FanFare」(店名は桐朋音大へのオマージュ?)の「妖怪焼き」が有名です。 |
②下石原八幡神社/布多天神社の近所にあり、江戸城を築城した大田道灌の子孫が創建した由緒ある神社です。 | ②下石原八幡神社/アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」では、下石原八幡神社の軒下に猫娘が棲んでいる設定になっています。 | ③江北氷川神社/毎年、御朱印状には宮司さん(全国でも数少ない女性の宮司さん)によって新たに詠まれた短歌が書き添えられています。 | ③江北氷川神社/神社では色々な種類のお守りが授与されていますが、その中でもオーケストラ部に所属する女子高生の願いで作られた演奏がうまくなる「音楽守り」が非常にご利益があると話題になっています。 |
擬声語 (聴覚) |
日本語 | 英語 | ||||||
鐘の音 | ゴーン カランカラン |
bong(バン) ding dong(ディングドング) |
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鈴の音 | チリンチリン | tinkle (ティンクル) | ||||||
雷の音 | ゴロゴロ | rumble (ランブル) | ||||||
時計の音 | カチカチ | ticktack (ティックタック) | ||||||
拍手の音 | パチパチ | clap (クラップ) | ||||||
牛の鳴き声 | モー | moo (ムー) | ||||||
豚の鳴き声 | ブーブー | oink (オインク) | ||||||
馬の鳴き声 | ヒヒーン | neigh (ネイ) | ||||||
犬の鳴き声 | キャンキャン | yap (ヤップ) | ||||||
猫の鳴き声 | ニャー | meow (ミァウ) | ||||||
擬態語 (聴覚以外の感覚) |
日本語 | 英語 | ||||||
なめらか(触覚) | スベスベ | smooth(スムース) | ||||||
かがやき(視覚) | キラキラ | twinkle (トゥウィンクル) | ||||||
かいてん(視覚) | クルクル | twirl (トゥワール) |
種類 | オノマトペ (言葉の配列) |
イメージ (象徴的な意味) |
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疲れ | へとへと | ほぼ限界に達し、これ以上動くことができないほど疲れている状態 | ||||
くたくた | 多少休めばまた動けるようになる程度に疲れている状態 | |||||
酔い | ぐでんぐでん | 正体がなくなるほど酔っている状態 | ||||
べろんべろん | ろれつが回らないほど酔っている状態 | |||||
気質 | ねちねち | しつこく嫌味っぽい小言を言う様子 | ||||
くどくど | いつまでも同じ小言を繰り返して言う様子 | |||||
湿感 | じとじと | 粘りつくように感じられるほど湿り気を帯びた状態 | ||||
じめじめ | 粘りつくほどではないが、湿気、水分などの多い状態 | |||||
味 | あっさり | まだ味が濃くなる前の段階で浅い味 | ||||
さっぱり | くどさやしつこくさがなく爽やかな味 | |||||
蝕感 | すべすべ | 触れた感じが滑らかな状態(ex.新しい石鹸、赤ちゃんの肌) | ||||
つるつる | 見た感じが光沢があって滑らかな状態(ex.濡れた石鹸、おじいちゃんの禿) |
男性 | 女性 | ウルトラマン の怪獣 |
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2011y | 2016y | 2011y | 2016y | ||||
阻害音 | あり | 64.4% | 67.0% | 32.7% | 44.4% | 73.0% | |
なし | 35.6% | 33.0% | 67.3% | 55.6% | 27.0% | ||
共鳴音 |
素材 | 音楽層 | 意味層 | 視覚層 | |
言葉 | 発音 | 語義 | 書体 (カリグラフィー等) |
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音楽 | 発声 | 動機 | 楽譜 (図形楽譜等) |
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映像 | 共感覚 | ビジュアル・アート (グラフィック等) |
「言葉」に合わせて「音楽」が添えられるパターン ① あまり音楽を意識せずに言葉を朗誦する(民謡など) (作家の意図>作曲家の意図) ② 音楽効果により言葉に意味解釈を施しながら朗誦する (作家の意図<作曲家の意図) 「音楽」に合わせて「言葉」が添えられるパターン ③ 音楽に従って言葉を朗誦する(レチタティーボ) (作家の意図=作曲家の意図) ④ 音楽に従って言葉を新しく創作する(=曲先≠詞先) (作家の意図<作曲家の意図) ☞ サリエリの歌劇「はじめは音楽、次に言葉」 ⑤ 言葉は独自性を失って音楽そのものになる(音声作曲法など) (作家の意図<作曲家の意図) ☞ モシ族(無文字文化)の音楽的会話
- 作者:ヴァルター・デュル
- 発売日: 2009/07/17
- メディア: 単行本
ドイツ・リートへの誘い―名曲案内からドイツ語発音法・実践まで
- 作者:梶木 喜代子
- 発売日: 2004/09/01
- メディア: 単行本